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JR参宮線田丸駅「木造駅舎をあえて新築」の大転換 旧駅舎は老朽化で解体、町が雰囲気を「再現」

東洋経済オンライン / 2024年9月6日 7時30分

多気駅―鳥羽駅間の途中駅ですべての快速みえが停車するのは伊勢市と二見浦の2駅のみ。そのほかの外城田、田丸、宮川、山田上口、五十鈴ケ丘、松下の各駅へは、とくに日中はワンマン運転の各駅停車で行くことになる。そのうちの1つ、度会郡玉城町にある田丸駅が最近、大きな転換点を迎えた。

玉城町の玄関口

多気駅―伊勢市駅のほぼ中間にある田丸駅は近鉄が通らない玉城町で唯一の鉄道駅。1893年の参宮鉄道開通と同時に開業した。大正元年(1912年)に建てられたという木造駅舎は、松阪や伊勢の地にゆかりがある小津安二郎監督の映画『浮草』にも登場した。町の玄関口として長く住民に親しまれていたが、10年ほど前には無人駅に。建物も老朽化が目立つようになり、耐震面で問題があることが判明、2023年に取り壊された。

一時は簡素なつくりの駅舎に建て替える計画があったようだが、町民らの強い要望を踏まえ、玉城町が約7300万円をかけ新たに交流施設として整備することになった。

2024年春に完成した「田丸駅交流施設」は木造瓦ぶきの平屋建てで、列車の待合スペースのほか、玉城町観光協会の案内所と交流スペースを設けた。朱色の柱のデザイン、駅名看板や花壇のレンガなどは旧駅舎から引き継いだ。駅は観光協会のスタッフが常駐する“有人駅”となった。

玉城町まちづくり推進課の藤井亮太さんは「たくさんの人が訪れる伊勢市の隣に位置している玉城町にも、観光で立ち寄って滞在してもらえるきっかけになれば。町の発展の中心となってきた田丸駅を地域住民同士や観光客との新たな交流の場として活用してもらいたい」と話す。

伊勢市に隣接する好立地

玉城町は人口約1万5000人。古くから伊勢・熊野・大和への街道が交わる宿場町として栄えた。町のシンボルは駅北西に位置する田丸城跡。1336年に南朝の北畠親房が玉丸山に築城、1575年に北畠家に入った織田信長の次男、織田信雄が三層の天守を築いたと伝わる。

天守跡や石垣、堀が往時の威容を物語っており、2017年に日本城郭協会の「続日本100名城」に選ばれた。堀の内側には町役場や、地元出身で名誉町民になっている朝日新聞の創始者、村山龍平の記念館がある。沖縄県の旧玉城村(たまぐすくそん、現・南城市)とは1993年に姉妹都市の盟約を結んでいる。

車社会の進展でにぎわいが商店街から郊外の大規模商業施設に移ったとはいえ、長く町の顔だった駅舎をバス停のように簡素に造り替えてしまうのは忍びない――。鉄道が通っていることが町のみなの誇りだった当時を再現したような田丸駅の立派な駅舎は、駅という公共施設の新たな役割を示しているように見える。

橋村 季真:東洋経済 記者

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