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【15年ぶり】「土星観測」好機が到来!楽しむコツ 2024年秋に訪れる「衝」を"東大宇宙博士"が解説

東洋経済オンライン / 2024年9月7日 10時0分

天体観測がぐんと楽しくなる方法を、東大宇宙博士が教えます!(写真:eizan/PIXTA)

「小惑星探査」や「火星移住」などのニュースから、UFO、宇宙人の話題まで、私たちの好奇心を刺激する「宇宙」。だが、興味はあるものの「学ぶハードルが高い」と思う人も少なくない。

知らなくても困らない知識ではあるが、「ブラックホールの正体は何なのか」「宇宙人は存在するのか」など、現代科学でも未解決の「不思議」や「謎」は多く、知れば知るほど知的好奇心が膨らむ世界でもある。また、知見を得ることで視野が広がり、ものの見方が大きく変わることも大きな魅力だろう。

そんな宇宙の知識を誰でもわかるように「基本」を押さえながら、やさしく解説したのが、井筒智彦氏の著書『東大宇宙博士が教える やわらか宇宙講座』だ。「会話形式でわかりやすい」「親子で学べる」と井筒氏が行うイベントでも読者からの言葉が届いている。

その井筒氏が「15年ぶりに訪れるチャンスで、星空の楽しみ方」を解説する。

神話と科学を知ると、星空が格段に面白くなる

まだまだ暑さが残る時期、また、これから秋の行楽シーズンを迎えるにあたって、レジャーやキャンプに行くという人も多いのではないでしょうか。ぜひ、この機会に自然のなかでゆったり星空を見上げてみてください。

【イラストでわかる】「まもなく15年ぶりの"土星観測のチャンス"が到来!」星を10倍楽しむ驚くほど簡単なコツ

星空は、何も考えずに、ぼーっと眺めるだけでも心地よい時間を過ごせます。

でもせっかくなら星空のことを知って、より充実した時間を過ごしていただきたい! ということで、今回はキャンプが楽しくなる裏ワザのような星空の話をしたいと思います。

星空を楽しむには、「神話」や「科学」をお供にするのがオススメです。

神話は自由自在なインスピレーションを、科学は現実と地続きのイマジネーションを与えてくれます。

今回は、「流れ星」「恒星」「惑星」について、神話と科学の両サイドから話していきます。

みなさんは流れ星を見たことがありますか?

見たことがあっても、あっという間に消えてしまって、「何も願いごとができなかった……」なんていう人もいるかもしれません。

そもそも「流れ星に願いごとを3回唱えると、その願いが叶う」というのはどうしてなのでしょう? それは、欧米で語り継がれている神話がもとになっています。

天の世界には神様が住んでいる。神様はときどき地上のことが気になって、部屋の窓を開けて地球をのぞき込む。チラッと見たかと思うと、サッと窓を閉めてしまう。

窓を開けているときに天の部屋から差し込む光が、地上では流れ星として見えている。流れ星が見えている間に願いごとを唱えると、神様の耳に届くので、その願いが叶う。

想像力豊かですよね。神話的には、流れ星は「神様ののぞき見」だったというわけです。

願いごとが神様の耳に届けばいいなら、唱えるのは3回じゃなくて1回だけでよくないですか? 私は観望会で「流れ星への願いごとは1回でOK」と提唱しています。

科学的に考えると流れ星は「宇宙のチリ」

ではその流れ星に出合う確率を高めるにはどうしたらいいのか。そこで科学です。

科学的な観点でいうと、流れ星の正体は「宇宙を漂うチリ」です。このチリが地球の空気とぶつかると、夜空をピューッと駆ける流れ星になります。直径1ミリくらいの小さな粒でも肉眼で見える流れ星になります。

宇宙のチリは、1日に約100トンも地球に降り注いでいるといわれています。なので私たちが気づいていないだけで、日中にもたくさんの流れ星が輝いているはずです。

タイミングによっては、ひと晩にあまたの流れ星が見られることがあります。

カギとなるのは「彗星」です。彗星は氷とチリからできた天体で、太陽の熱で氷が溶かされると、あちこちにチリをまき散らします。彗星の通り道を地球が通過すると、一夜に何百もの流れ星が見える「流星群」になります。

流星群のなかでもとくに流れ星の数が多い「三大流星群」がオススメです。「しぶんぎ座流星群」(1月4日ごろ)、「ペルセウス座流星群」(8月12日ごろ)、「ふたご座流星群」(12月14日ごろ)、この3つをおさえておくといいでしょう。

この夏、広島の山奥で開催したペルセウス座流星群の観望会では、空を切り裂くような流れ星がいくつも見え、参加者と一緒に「おおぉぉぉ!!」と歓声を上げていました。結局、1回だけだとしても願いごとは唱えられませんでしたが(笑)、一生モノの思い出になりました。

次は、今年12月のふたご座流星群は月明かりの影響で見えにくいので、来年1月3日の夜中(4日の0時)に極大を迎えるしぶんぎ座流星群を狙うのがいいでしょう。

数は多くないですが、この秋に流星群を楽しむこともできます。街明かりがなく、たくさんの星が見えるような場所で、10月8日に極大となる「10月りゅう座流星群」を狙ってみてください。1時間に数個ほどの流れ星が見えると期待されています。

太陽系の天体の動きを感じながら、また、神様ののぞき見を期待しながら、流れ星を待ってみてください。

続いては、夜空に輝く星、「恒星」について。

「恒星」は夜空のなかで、恒に位置関係が変わらないことから「恒星」と呼ばれています。お互いの位置が固定されているので、星と星をつないで「星座」をつくることができます。

太古の人々は、星の輝きをどうとらえていたのでしょうか? 

古代エジプトでは、太陽は「ラー」という男神、天空は「ヌト」という女神だと考えられていました。ラーは船に乗って、天のナイル川を東から南、そして西へと渡り、そこで天空の女神「ヌト」に飲み込まれ、体のなかを移動していきます。このとき天空の女神ヌトの体内から漏れてくる太陽神ラーの光が「星の輝き」だとされていました。

星の輝きは、太陽がつくり出したものだと考えられていたのです。

想像力がすごい! 「星座」の物語と「惑星」

星座にまつわる神話が好きだという人も多いでしょう。

星の配置から何を想像するかは、地域によってさまざまです。たとえば、北極星の近くにある「北斗七星」は、日本では「ひしゃく」に見立てられてきました。

しかし中国では、北極星は宇宙にいる天帝で、北斗七星は「天帝の乗りもの(帝車)」だと考えられてきました。

広く普及している「88星座」では、北斗七星はおおぐま座に属していて、7つの星は「熊のしっぽ」にあたります。

ひしゃく、天帝の乗りもの、熊のしっぽーーどれも発想がぜんぜん違いますね。

ギリシャ神話では、おおぐま座の熊はもともと若い女性(の姿をした精霊)で、神の怒りに触れたことで熊に変えられ天に上げられたとされています。神話がつくられた地域では北斗七星は地平線に沈まなかったことから、熊は休むことを許されず、ずっと北極星のまわりを回り続けている、ということになっているのです。

星の見えかたが神話の内容に反映されていることからわかるように、太古の人たちは想像力だけでなく、観察力もすごかったのです。

観察力のすごさは、「惑星」に対してもいえます。

惑星は太陽のまわりを回る大きくて丸い天体です。それぞれマイペースで太陽のまわりを回り、恒星とは違って夜空で惑うように動いて見えるため「惑星」と呼ばれます。

ただ、マイペースとはいっても、でたらめに動いているわけではないのです。

太陽を1周する日数は惑星ごとに決まっていて、太陽に近いほど短くなります。たとえば、水星は88日で、土星は約30年です。

この違いは夜空のなかでの動きかたに現れ、水星は速く、土星はゆっくり動きます。

惑星の動き方に「神様の特徴」が反映されている

ギリシャ神話では、惑星は神様と見なされていますが、おもしろいことに、水星は足の速い伝令の神で、土星は足の遅い老人の神とされています。惑星の動きかたが「神様の特徴」に反映されているのです。

他の惑星はというと、ダイヤモンドのように輝く金星は、見た目はきれいだけど心は美しくない美の女神「アプロディーテ(ヴィーナス)」、恒星をしのぐ明るさで存在感を放つ木星は、浮気ばかりしている全知全能の最高神「ゼウス(ジュピター)」、血を連想させる真っ赤な火星は、じつは人間よりも弱い戦いの神「アレス(マーズ)」……などなど。

惑星の見た目の違いが反映されつつも、みんな結構なクセものなのです。
神々をめぐる物語には、ロマンチックな話もあれば、人間味を感じる泥臭い話もあります。いろいろと調べてみて、惑星を見ながら夜空を躍動する神々の姿を想像してみるのもおもしろいですよ。

この秋は、スペシャルな土星を楽しむことができます。

9月8日、土星が地球から見て太陽とちょうど反対側にきます(天文学の用語で「衝」といいます)。

年間でもっとも大きく明るい土星が、日の入りごろに東から昇り、日の出ごろに西に沈むまで、一晩中見られるのです。

今年15年に一度の好機到来!「土星観望」

9月17日には、土星が「中秋の名月」と大接近します(中秋の名月については、次回詳しくお話します)。

そして来年2025年には、なんと、15年ぶりに土星の環が消失します!……といっても、本当に環がなくなるわけではなく、土星を真横から見る位置関係ため、環が見えなくなるのです。

すでに現時点でも環は細くなっていて、土星は串にささった団子のような姿をしています。

来年の消失に向けて、ぜひこの秋の土星も見ておきましょう。

土星の環は肉眼では見えないので、天体望遠鏡を使うか、天文台に行くといいでしょう。

本来、星空を眺めるのに言葉や知識は必要なく、自分の感性で好きなように楽しんだらいいと思います。ただ、神話や科学を知ると、夜空の景色が奥深く感じられるようになります。

いわば、神話や科学は星空を楽しむための「スパイス」のようなもの。素材(星空)そのままでも十分ですが、スパイス(神話や科学)があると素材の良さが引き出されるのです。

神話と科学、一見真逆のように思えますが、自然を丁寧に観察し、何が起きているのかを説明したいと思う気持ちは共通しています。太古の人々観察力と発想力に驚かされる人もいれば、科学的な手法で事実が解き明かされることに感動する人もいるでしょう。

また、神話や科学以外にも、星にまつわる音楽を聴きながら、あるいは、宇宙をテーマにしたSF小説を読みながら……など、星空の楽しみかたは無限にあります。ぜひ自分なりの楽しみかたを見つけてみてください。

                     (イラスト:村上テツヤ)

井筒 智彦:宇宙博士、東京大学 博士号(理学)

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