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世界も驚いた「日本人宇宙好き女子」の衛星打上げ スペースX社「ファルコン9ロケット」で快挙へ

東洋経済オンライン / 2024年9月10日 12時0分

アメリカで人工衛星の打ち上げに成功した「コスモ女子」のメンバー(写真:著者提供)

最近ますます私たちの身近になりつつある「宇宙」。アメリカではSpaceXが毎週のようにロケットを打ち上げ、世界的にも盛り上がりを見せている。

【写真で見る】世界も驚いた!「日本人宇宙好き女子」衛星打上げのリアルすぎる様子

そんな宇宙についての「基本」や「耳寄り情報」をわかりやすく解説したのが、宇宙博士でタレントとしても活躍中の井筒智彦氏が上梓した『東大宇宙博士が教えるやわらか宇宙講座』だ。知りたい情報が会話形式で構成されているため、知識のない人や親子でも楽しめる。

宇宙が大好きな女性のコミュニティ「コスモ女子」も、そんな未経験の女性たちが集まり、スタートした。

前回「【日本初!】女性宇宙コミュニティが衛星打上げ」でもお知らせしたように、彼女たちは実に4年がかりの準備期間を経て、今年8月、アメリカ・フロリダ州で人工衛星の打ち上げを決行。

その様子をスペースX社が全世界に向けて中継し、経済誌「Forbes」も取り上げるなど、多くの人が見守る中、打ち上げは見事成功。「女性だけの団体」では日本初となる快挙となった。

コスモ女子を運営し、彼女たちの挑戦をスポンサーという立場で見守ってきた株式会社Kanatta代表取締役社長の井口恵氏が、その時の打ち上げの様子を語る。

打ち上げ直前でまさかのトラブル発生

4年がかりの準備期間を経て、2024年4月にコスモ女子アマチュア無線クラブの人工衛星(通称:Emma(エマ))をJAXAに引き渡し、あとは打ち上げを待つのみ!と安心していたのも束の間。

Emmaが搭載される予定のSpaceXのロケット「ファルコン9」に不具合が発生したニュースが舞い込んできました。

スペースXのファルコン9は、365回以上の打ち上げ実績(2024年8月末時点)と99%の成功率を誇るロケットです。

そんなファルコン9がなんと、7年以上ぶりに失敗……。連邦航空局(FAA)から飛行停止処分を受けてしまいました。

Emmaの打ち上げ予定まで1カ月を切った、7月上旬の出来事でした。

8月上旬を予定している打ち上げまでに不具合は解消するのか? 解消しなかった場合、打ち上げはいつになるのか? 

関係各所に問い合わせるも、誰もどうなるかわからず。焦る気持ちとは裏腹に、打ち上げ予定日はどんどん近づいていきました。

「予定通り打ち上げになるかはわからないけど、とにかくアメリカに行こう!」

そう決めた私たちは、打ち上げ予定日の1週間前のギリギリのタイミングで航空券を購入し、射場のあるアメリカのフロリダ州に向かいました。

打ち上げを現地で見たいと手を挙げたのは私を含め5名。プロジェクトリーダーの塔本愛さんをはじめ、今回の打ち上げに特に思い入れの強いメンバーでした。

タイミング的に同じ便での移動は叶わず、各々別の空港を経由して、なんとか打ち上げ予定日当日の8月3日未明に全員フロリダ入りを果たしました。

「待ちに待った打ち上げ」に、長蛇の列が!

フロリダのオーランド国際空港で無事全員集合できたことを喜びながら、数時間後には打ち上げ場所の近くにあるケネディ・スペース・センターに向かいました。

昼の打ち上げ予定に間に合うよう余裕をもっての到着でしたが、オープンと同時に入場しようとする人々が殺到し、駐車場には1時間ほどの長蛇の列が! 地元住民にとってもロケット打ち上げは一大イベントであることを実感しました。

やっとケネディ・スペース・センターに到着した頃には、打ち上げまで2時間を切っていました。

まだあまり実感がない中で、入り口にある打ち上げまでのカウントダウンの時計を見て、「本当にあと1時間半で打ち上がるんだ!」とドキドキしました。

なお、肉眼で打ち上げを見られる場所はいくつかあり、この記念すべき瞬間をどこで迎えようか迷ったのですが、スペースX社のYouTubeの中継が大画面で映し出されるディスプレイの近くを選びました。

ケネディ・スペース・センターからバスで10分ほどの見学場所に到着すると、そこにはすでに数百名の観衆がいました。

前方にスペースXからの最新情報をマイクでアナウンスしてくれる男性がいたので、どこが一番よく見えるのかを確認し、ベストポジションでスタンバイ。

「いよいよ打ち上げだ!」とドキドキしながら、オンラインで一緒に打ち上げを見守るために集まってくださった日本のみなさんに、現地の様子を実況していました。

打ち上げまで15分を切った頃、信じられない言葉が飛び込んできました。

「今日の打ち上げは中止です」

「えっ、ここにきて中止!?」

まったく理解が追いつかないまま、流れるように打ち上げ場所を後にする観客に急かされる形で、私たちもその場からの移動を余儀なくされました。

奇跡に近い「ロケット打ち上げの条件」

後から知ったのですが、ロケットの打ち上げにはさまざまな制約があり、少なくとも打ち上げ前の2時間はずっと快晴であることが必要なのだそうです。

それだけ聞くと2時間くらい晴れるだろうと思ってしまいがちですが、8月のフロリダ州は「雨季」真っ只中。1カ月のうちなんと20日間は雨が降るのです。

それ以外にも上空の雲の状況など、さまざまな条件が揃わない限り、ロケットは飛びません。

突然の打ち上げ中止に落胆していた私たちでしたが、嬉しいことに打ち上げは次の日にリスケになりました。気を取り直してその日は少し観光をした後、ホテルで体を休めることにしました。

ちなみに今回の宿泊先はケネディ・スペース・センターからすぐの場所にある、宇宙をテーマにしたホテル。大好きな宇宙に囲まれて幸せな一晩を過ごし、翌日また打ち上げ場所に向かいました。

天気予報は、次の日からハリケーンが上陸するニュースで持ちきりでした。1週間の滞在を予定していた私たちにとって、翌日のハリケーン上陸は、この日に打ち上がらなければ現地で打ち上げを見届けることはほぼ絶望的になることを意味していました。

「お願いだから、今日打ち上がってください……!!」

そう祈りながら、私たちは射場に設置されているファルコン9を見つめていました。前日に中止を発表したアナウンス担当の男性も、こと細かにロケットの状況を実況してくれます。

30分前に燃料が補給され、その後も順調に準備が進んでいき、いよいよカウントダウンが始まりました。

いよいよ「クライマックス」へ!

「3、2、1……」

カウントダウンが終わり、ついにロケットが発射しました!

肉眼でもはっきり見えたファルコン9は、まっすぐ上空へ突き進んでいきます。そして数秒遅れてエンジン音も聞こえてきました。

「すごーい! 飛んでるーーー!」

「4年越しのプロジェクトがクライマックスを迎えるとき、どんな気持ちになるんだろう?」と自分でも楽しみにしていたのですが、わかったことは、人は興奮しすぎると小学生のような語彙力になってしまうということです(笑)。

興奮冷めやらぬまま、今度は切り離されたロケットの一部が帰還すると聞いて、再び射場の近くをじっと見つめていると、一瞬だけ光の線が現れました。そして数秒後には「ブーン!」という爆音が。再利用ロケットが帰還した際のソニックブームが聞こえてきたのです。

今回スペースXのファルコン9での打ち上げだったからこそ、打ち上げと帰還の両方が楽しめたことはとてもラッキーでした。

ロケットの帰還を見届けた後は、日本からオンラインで打ち上げを見守っていたコスモ女子のみんなとの中継を開始しました。残念ながら現地で打ち上げを見届けることは叶わなかったメンバーも、打ち上げ成功を目の当たりにして感動して号泣。

コスモ女子以外にも、私たちのプロジェクトを応援してくださっていた方々約100名が、一緒に打ち上げ成功を喜んでくださっていました。

日本時間2024年8月5日0時02分、フロリダから打ち上がった人工衛星Emmaは、2日後には無事国際宇宙ステーション(ISS)に到着。約1カ月の滞在期間を経て、8月29日にISSから放出されました。

「打ち上げ」「放出」「通信」すべて成功

ISSからの放出の際には、コスモ女子から8名がJAXAに入構し、うち5名はVIPルームから放出の際のコールをしました。ISSからEmmaが放出され、宇宙空間に飛び立つ姿は、打ち上げとはまた別の感動がありました。

放出後、Emmaは無事軌道に乗り、通信を開始しました。人工衛星の肝はこの通信になるので、ドキドキしながら結果を待っていましたが、そちらも見事成功。

実はコスモ女子の自前のアンテナで受信に成功する前に、全国のアマチュア無線家の方々から「Emmaの産声が聞こえました!」とご連絡をいただき、通信成功を知った形でした。

今後は1日数回Emmaが日本の上空を通過する際に通信をして、ミッションを進めていきます。

今回の打ち上げを通じて、改めてたくさんの方々に応援していただいたからこそ、ここまで辿り着けたことを感じました。

本当にありがとうございました。これからも新しいことに挑戦していきたいと思います!

井口 恵:Kanatta代表取締役社長

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