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「新宿野戦病院」が"もっと評価されてもいい"根拠 「虎に翼」とのキャスト被りが話題になっているが…

東洋経済オンライン / 2024年9月11日 22時0分

ラフに見えて繊細な「小池栄子」の魅力

朝ドラ被りが話題の中、被っていないのが小池栄子である。

朝ドラ経験が豊富な小池(2003年『こころ』、2008年『瞳』、2015年『マッサン』)だが、今回は『新宿野戦病院』に集中している。

仲野太賀とW主演の小池が演じるアメリカ国籍の軍医ヨウコ・ニシ・フリーマンは、仲野演じる美容皮膚科医とは親戚関係(いとこ)。2人は第10話でキスしていたが(しかも感染症対策で濃厚接触は厳禁)、恋に発展することはおそらくなさそうである。

拝金主義の美容皮膚科医とは真逆の、お金の有無を命の選別の基準にしないヨウコは、つねに的確にトリアージしている。「戦場では命は平等である」と考え、戦場から歌舞伎町と活躍の場を移しても、分け隔てなく治療にあたる医師の良心のような存在で、美容皮膚科医は彼女の影響でお金より人の心を重要視していくようになる。

だがそれだけでは、小池栄子演じるヨウコはよくあるヒューマンな医療ものの主人公にすぎない。そこが宮藤官九郎流で、ヨウコはアメリカ国籍ながら英語がそんなに流暢ではないし、日本語はコッテコテの岡山弁。なんだか不自由に聞こえる言葉遣いと、戦場をかいくぐってきているだけあるやたらと豪快な身振りが、ヨウコのキャラを印象的なものにしていた。

小池栄子は大きな瞳をひん剥き、まばたきもせず、口を大きく開けて大声でしゃべる。両足は大股で、とにかく身振り手振りが大きい。ともすると、うるさく下品に見えたり、無理しすぎで痛々しく見えたり、きつく怖く見えたりと、おそらく演じるのは難しい役だと思う。

ところが小池は、元からエネルギッシュなイメージがあるのでまったく無理をしているように見えない。

小池はヨウコのうるささをうまいことコントロールしているようにも見える。

タンクトップの上にシャツを無造作に羽織り、ジーパンや短パン、キャップにゴツいブーツとカジュアルなファッションだが、けっしてボーイッシュすぎず、ほんの少しだけ女性らしい身体のラインが見えそうで見えない微妙なところをキープして、清潔感もある。

ラフに見えて繊細。ヨウコは命をラフ(雑)に救う医者という設定だが、雑でも命の危機を見事に救っているのと同じく、小池栄子は見せ方(演技)にものすごく緻密な計算を働かせているように感じるのだ。

軽やかにまったく違うキャラクターを演じ分ける俳優も魅力的だが、ひとつの役をこんなにも集中して突き詰めて見えることもいいものである。小池栄子が朝ドラと被っていなくてほんとうによかった。

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