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「富山の祭り」資金対策"80万円の観覧席"の満足度 20万人が見物、300年の歴史ある「おわら風の盆」

東洋経済オンライン / 2024年9月15日 10時0分

橘さんは、「ありがたいことに八尾に移住してくる人たちは、おわらに魅了された人が多く、祭りに対して非常に協力的だ」というが、全体として見れば少子高齢化の流れには抗いがたく、とくに小さな町内では、祭りの担い手不足が課題になっている。

そこで、こうした人手不足・資金不足への対策として、今年から新たに始めたのが「祭り×推し活」の取り組みだ。具体的には、11町それぞれの町紋がデザインされた「応援うちわ」やオリジナル手ぬぐいを祭り会場や越中八尾観光協会のオンラインショップで販売。お客さんに自分が応援したい町のうちわを買ってもらい、踊りを見に行ってもらおうというのである。その収益は必要経費を除いて、翌年以降の祭りの運営に役立てられる。

この「推し活」の取り組みには次のような効果が期待され、実際に反響も大きいという。

「今回の取り組みは、ふるさと納税と同じように、祭り会場に来なくても応援できる仕組みであり画期的。しかも、一度、商品を開発して販売チャネルさえ構築すれば、運営側にそれほどのリソースが必要とされず、持続性も高い」(富山県の県政エグゼクティブアドバイザーを務める立教大学客員教授の永谷亜矢子さん)

「推し活グッズの販売を告知したところ、今年は祭りに行けないが、ぜひ応援したいので購入したいとの声をいただいた。中には複数の町のうちわを購入してくださるお客様もいる。祭りを応援してくれる人が大勢いることを地域の若者にも知ってもらうことで、今後、祭りに積極的に関わるきっかけになればと思う。収益化はもちろんだが、祭りの担い手不足の対策としても寄与することを期待している」(グッズの販売を担当する県職員)

祭り期間中の3日間で、推し活グッズ(町紋入りうちわ1000円、八尾和紙を使った特性うちわ3000円、手ぬぐい3000円。いずれも税込)の販売点数は2156点(うちわ合計1640点)、売り上げは約290万円に上ったという。

筆者は地元の神奈川県でイベントの運営にも携わっているが、近年は企業の協賛金等も先細りの傾向があるため、経費を差し引いたとしてもこの290万円という金額はバカにならないと感じる。うちわはイベント時に無料配布するようなケースも多いが、上手く商品化すればそれなりの売り上げが立つのだ。たかがうちわ、されどうちわである。

1組80万円の町家観覧席

今年のおわら風の盆で、もう1つ興味深かったのが「町屋貸切 特別観覧席プラン」(祭り当日の24時まで利用可。宿泊不可)だ。祭りが開催されるエリアの町家1棟(最大10名で利用可)を1組80万円(税込。売り上げの一部は、祭りの保存・維持に活用)で貸し切るプランで、2階からゆったりと祭りを観賞できるほか、部屋に踊り手4名が来て「特別演舞」を披露するサービスなども付くという。このプランに果たして80万円の価値があるのか、取材前から気になっていた。

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