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チョーヤ、あまりに常識外れだった「3つの変革」 完熟梅での仕入れ、柔軟な出荷時間…あと1つは?

東洋経済オンライン / 2024年9月16日 13時5分

減農薬については1997年、「除草剤を使わず草を刈り取り、基準である農薬散布の回数と量を半分に」をスローガンにスタート。当時はまだ農薬の安全性への注目度は低かったそうだが、今はそれが広まり、他府県の農家も取り組むようになった。次のステップとして、有機栽培を始めたのは1999年のことだ。農家とグループを結成し、土作りや育成方法の研究にも取り組んでおり、この考えに賛同する農家は年々増えていっている。

そして、これらの取り組みの際にチョーヤが注意しているのが、農家に一方的な指示をしないことだそうだ。あくまで協力して行うことで、その結果は農家の知識となり、強みとなる。他方、チョーヤとしても、日本ではじめてJONA(特定非営利活動法人日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)有機認証を取得した梅酒『The CHOYA 大地の梅』を発売するなど、目に見える成果を得ている。ここでも、ウィンウィンの関係が構築されているのだ。

金銅氏はそれ以外にも、ほぼ一年中和歌山県に足を運んでいるそうで、「和歌山の梅農家の多くの方が私の顔を知っているのでは。文字通り、顔の見えるお付き合いをしています」と微笑む。日頃から農家や農協に対して、「梅がなくなったらチョーヤは商売を辞めます。弊社を潰さないでください。そのカギはあなたたちの手にあります」と伝えているそうだ。

チョーヤの不変の哲学。「90点の完璧」を追求する

ここまで、梅を安定して仕入れ、安心安全な梅酒を作るため、チョーヤが行ってきた改革を紹介してきた。しかし反対に、長年変わらず伝え続けていることがある。「90点以下のものをつくらない」というスローガンだ。

その理由を金銅氏は、「化学製品や工業製品は100点を目指せます。機能性や、車であればスピードなどで数値化もできますよね。でも天然の果実はどこまでいっても自然の影響を受けますから、味を統一できなくて当たり前。毎年100点は到底無理です」と説明する。

そこで目標に据えたのが、「90点以下のものをつくらない」だったそうだ。「ブレンドの努力で90点は目指せます。90点以下の味をつくらないことを目標にすれば、お客様の期待を損なわず、信頼を失わないのではないでしょうか」(金銅氏)。

チョーヤの企業理念は、「古来健康のために食されてきた梅の文化を継承し、世界へ発信すること」だ。そのため味の基本はあくまで、「焼酎35度1.8Lに対し、梅1kg、砂糖1kg」の家庭のレシピをベースにしている。それをもう少し淡白にしたり濃厚にしたりと、上下にずらしているだけなのだそうだ。

もちろん、時代と共に甘みを抑えてドライにしたりという微調整はあるが、基本は「代々日本で受け継がれてきた梅酒の味」にある。だから、科学的な添加で無理やり100点を目指すことに意味はないのだ。変えてきたものと、その土台にある変わらないもの。このコントラストがチョーヤのロングセラーを支えているのかもしれない。

「今年は前代未聞の梅不作だそうです。ということは、梅酒のチョーヤは甚大な被害を受けてるはず。笹間さん、ちょっと取材しませんか?」

担当編集の思いつきで始まった本取材だったが、右肩下がりの業界の中で成長を続ける、中小企業の強さ、堅実さを感じさせられた。だが、「関西のおっちゃん」感満載な、饒舌な金銅氏の話はまだまだ続いて……。

ということで、後編では、創業から見据えていた海外展開への挑戦や、技術の核とも言えるブレンドへのこだわり、展望について解説する。

笹間 聖子:フリーライター・編集者

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