アクションカメラ王者「GoPro」が赤字転落の理由 最も安い半額モデルを9月発売で巻き返し狙う
東洋経済オンライン / 2024年9月16日 8時0分
実際、アクションカメラ市場の製品更新のサイクルは約1年で、通常のビデオカメラより短い。ゴープロが市場を作って20年以上経つ中で、コモディティ化も進んでおり、新製品が出るたびに旧製品の値下げもあり、価格競争が激しくなっている構図だ。
セールや値下げ競争激しく赤字転落
こうした環境変化の中で、もがいているのがゴープロだ。
ゴープロは2023年12月期に営業赤字に転落。直近の四半期決算(2024年4~6月)まで6四半期連続で赤字が続いている。8月には2024年末までに全従業員の約15%に相当する約140人を削減すると発表し、大幅なリストラにも着手した。
創業者のウッドマンCEOは最新の決算説明会で業績悪化の原因について言及。在庫を圧縮するためにセールを行ったこと、価格改定による値下げ戦略が失敗したと認めたうえで、「2024年度は変革に集中する1年だ。2025年度にシェアを取り戻し、収益改善を見込む」と強調した。
ゴープロは実はこれまでも赤字を繰り返している。スマートフォンカメラの高性能化やドローン事業の失敗が重なった2016年度から5期連続の赤字を計上。当時も大規模な人員削減を実施している。
その後、GoProのユーザーが作った膨大なコンテンツを管理・保存・編集できるソフトウエアやクラウドストレージのサブスクリプション(定額課金)提供などハードウエアに頼らない戦略を推し進め、2021年に黒字化を果たしたばかりだ。
再び赤字に陥った今、どう抜け出すのか。新製品の裾野拡大とともに、新たに販路も見直す。ゴープロはソフトバンクC&Sと販売契約を締結し、ヨドバシカメラやヤマダ電機といった大手家電量販店での取り扱いを強化すると表明。中国DJIなどが強い量販店などとの関係構築に踏み出す。
これまでゴープロはダイビングショップなどスポーツ専門店への販路に強みがあった。今回の提携で従来の販路に加え、より広範な消費者層にアプローチを図る狙いだ。
ヘルメットメーカー買収でコア層強化も
一方、従来のコア層にもアプローチを広げる。ゴープロは欧米を中心にスポーツの大会をスポンサードするなど振興に注力し、強固なファン基盤を築いてきた。
その中でも、モータースポーツはブランドビジネスの中核を担う分野。2024年1月にはオートバイ用ヘルメットメーカー「Forcite」社の買収を発表した。
同社はカメラやインカム機能を搭載したスマートヘルメットを開発するオーストラリアの企業で、今後共同でゴープロ独自ブランドのヘルメットを開発すると明かす。また、他のヘルメットメーカーとも提携し、OEM(相手先ブランドによる生産)供給することで事業拡大を図る方針だ。
ゴープロで国内のマーケティングを担当するイ・スホン氏は「スポーツやアウトドア分野で根強いファンやクリエイターがいることがわれわれの強みだ。これからもコアユーザーを大事にしつつ、ファミリー層や若者など新規ユーザーにも焦点を当てた戦略を展開する」と意気込む。
アクションカメラ市場の裾野が広がる中、かつての王者は新製品の発売を足がかりに再び輝くことはできるのか。今後の動向に注目が集まる。
山下 美沙:東洋経済 記者
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