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渋谷・おしゃれ飲食街の「インフレ」が進む"裏事情" 立ち飲みのワイン1杯1200円も躊躇なく飲む若者たち

東洋経済オンライン / 2024年9月21日 9時0分

にもかかわらず、それらの店を「コスパがいい」と評する口コミすら見たことがある。思わず「コスパとは?」と首を傾げたくなる。

渋谷で飲む若者は一体何に価値を感じてその値段を受け入れているのか? 外食は小売りと違い、商品そのものだけでなく接客や空間、雰囲気などの「体験」込みで値段を払ってもらうビジネスモデルだ。商品そのものの価値以上に、そうした店は魅力的な外食体験をお客は感じているということなのだろう。

SNSの功罪も値上げの要因

値段が上がっているのには、店側の都合もある。物価や人件費の高騰ももちろんあるが、SNSの影響も大きい。

近年はよくも悪くもSNSが集客に影響を及ぼしている。インフルエンサーに取り上げられるなど何かの拍子でバズり、普段は来ないような若い人が詰めかけることがある。

そうした層は写真を撮るための最低限の商品しか注文せず、客単価が上がらない。すると店が想定している売上が取れず、客数は増えるのに売上は下がるという現象が起きてしまう。客数が増えることで現場は疲弊し、もともと来ていた本来の客単価を支払うお客は、突然若い人で騒がしくなった店に嫌気がして離れていく。これに悩まされる店は多く、渋谷という立地は特にその現象が起こりやすい。

そこで店は価格設定を高めにすることで客単価対策を行っている。特に、SNSを見てきたお客が絶対に頼みたい名物や写真映えするメニューの値段を上げることで、注文数が少なくても一定の単価を確保できる。それを支払えない層を排除することで店の治安が保たれ、こうして「カジュアルだけどいい値段のする店」が完成する。

ここで筆者が思い出すのは、2016年にアマゾンプライムビデオで配信されたドラマ「東京女子図鑑」だ。

水川あさみ演じる主人公・綾が、23歳で上京してから40歳になるまでを描いた本作の中には、高級フランス料理店の代表格、ミシュラン三ツ星の「ジョエル・ロブション」について、「30歳までにデートで行けたらいい女」と形容するシーンがある。綾のこの言葉に「そんなの、初めて聞いたよ!?」と思う人も少なくなさそうだが、とは言え、高級レストランを訪れることがステータスとされていた時代があったのも間違いない。

そう考えると、今の若者は、高級レストランにはもう興味がないのかもしれない。

現代人は「失敗したくない」

Z世代はじめ現代人は「失敗したくない」という思いが強い。インターネットの発達により多くの情報が氾濫し、たくさんの選択肢があふれる中で「正解を選ばなくては」「間違えたくない」というプレッシャーにさいなまれている。若い世代はSNSで自分を発信する機会も多く、人の目が気になり、失敗した姿を見られることに強い抵抗を持つようになっているのも一因だ(参考「SHIBUYA109式 Z世代マーケティング」)。

高級なレストランは行き慣れてない人からしたら緊張するし、マナーがわからず恥をかく可能性もある。難しい料理も理解できるかわからない。「失敗したくない」のに、わざわざ高い代金を払っていくメリットがない。

一方、上記の店はカジュアルに自然体で楽しめる。でもイケてる雰囲気、非日常感が楽しめる。スタッフも友達のようなラフな感じ、でも失礼じゃなくて心地いい。同じお金なら、こういう体験に払いたいのではないか。

カジュアルに見える店でいい酒や料理をさらりと嗜めるのがイマドキなステータスになりつつある。今やロブションよりも奥渋のワインバルで1杯1200円の自然派ワインを気取らず飲めたら「いい女」なのかもしれない。そう考えれば、ロブションに行かずとも「いい女」になれるならワインが1200円しても、確かにコスパはいい。

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大関 まなみ:フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人

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