高速列車や水素車両「国際鉄道見本市」の最前線 「イノトランス2024」注目の展示車を一挙紹介
東洋経済オンライン / 2024年9月25日 7時0分
韓国のヒュンダイロテムも水素燃料を動力源とした車両を持ち込んだ。こちらはトラム(路面電車)で、大田市で使用される予定という。低床式のトラムは床下にスペースがないため、水素のタンクをどこに設置するかが課題となるが、同社の技術者によれば屋根上に制御装置などと並べて設置しているという。
2022年のイノトランスでは、欧州系主要メーカーが水素燃料車両を展示して注目を集めたが、今回はアジアの2社が水素燃料車両を展示した点は興味深い。ただ、韓国の場合は水素の供給源をどうするのかというインフラの面が少々気になる部分でもある。
シーメンスの「エジプト向け高速列車」
フランスのアルストムは、ドイツのニーダーザクセン州地域に投入する予定の2階建て近郊型電車「コラディア・マックス」を展示。同社のコラディアシリーズは、丸みを帯びたデザインが特徴であったが、最新モデルはシャープな顔立ちにモデルチェンジした。一見するとオール2階建てのようにも見えるが、中間客車の一部は連続性を持たせたデザインの平屋構造で、そこに制御装置などを搭載している。
このほか、アルストムは吸収合併したボンバルディアから受け入れた「TRAXX3」汎用型電気機関車も展示している。
ドイツのシーメンスは、同国の高速列車ICE3や国際列車ユーロスターのベース車両として知られる高速車両「ヴェラロ」のエジプト向け仕様、近郊型車両「ミレオ・スマート」、高速旅客用電気機関車「230km/hヴェクトロン」、そしてチェコのシュコダと共同開発したチェコ鉄道向け新型旅客列車「ヴェクトレイン」を展示している。
高速列車ヴェラロは、デビューからだいぶ年月が経ってはいるものの、今も新規受注を獲得するなど人気のモデルとなっている。ただ、エジプト向けは最高時速230kmと、高速車両としてはかなり控えめなスペックだ。
新型旅客列車ヴェクトレインは、オーストリアの新型「レイルジェット」や「ナイトジェット」に似たデザインではあるが、ベースは初代レイルジェットの車両と同様の「ヴィアッジョ・プラットフォーム」を採用している。すでにレイルジェットの使用実績があるチェコ向けであるため、認可を取得すれば運行開始は早いものと思われる。新型の230km/hヴェクトロン機関車との組み合わせで、スピードアップも期待される。
スイス・シュタドラーは8車種を展示
毎回、イノトランスに多くの車種を持ち込むスイスのシュタドラーは、今回も8車種を用意。面白いのは「RS ZERO」と呼ばれる1両のバッテリー車両で、パンタグラフを介して取り入れる架線からの電力で充電するシンプルな構成だが、ソファのようなラウンジシートや、窓側に設けられたデスクに向かって座るビジネススペースなど、インテリアにも工夫が凝らされている点が興味深かった。
ポーランドのネヴァグは、高速旅客用電気機関車「グリフィン200km/h」を展示。ヨーロッパの電気機関車市場は、シーメンスのヴェクトロンとアルストムのTRAXX3がほぼ独占している形だが、まずは地元ポーランド鉄道へ導入が決まった。他国でも採用されるかが注目される。
身売りで揺れているスペインのタルゴは、ドイツの新型旅客列車ICE-Lの牽引用として使用する予定の電気機関車がようやく姿を現した。機関車の製造がかなり遅れていたが、先に完成して試運転を行っている客車も認可取得が難航し、すでに納期が1年以上遅れることが発表されている。無事に納入されるのか、別の意味で注目される。
世界が本格的にコロナ禍を脱してから初の開催となる今回のイノトランス。2022年と比較すれば高速列車からトラムまで、全体的にはかなりバラエティに富んだ展示内容になったと言えるだろう。
橋爪 智之:欧州鉄道フォトライター
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