専門家が指摘、福島の廃炉「2051年完了」は無理 宮野廣・原子力学会廃炉委委員長に聞く
東洋経済オンライン / 2024年9月26日 9時0分
東電の試算では燃料デブリは約880トン、学会報告の見積もりでは約644トンとなっているが、建屋の解体などで発生する放射性廃棄物の総量ははるかに多い。学会では放射性廃棄物の扱いをどうすべきかについて問題提起した。なお、学会報告書の試算では、汚染された土壌は含まれていない。これらを入れると総量はさらに多くなる。
――国の計画では放射性廃棄物の処分も含め、遅くとも2051年までに廃炉を終えるとされています。
それは無理ではないか。先ほど述べたように、2050年頃までに初号機で燃料デブリの本格的取り出しに着手できればいいほうだと思っている。
それまでに原子炉建屋の周りの囲いをどうするか、取り出しのための装置をどこに据え付け、どこまで自動で進めるのかなど、決めるべきテーマがたくさんある。一生懸命頑張らないと前に進まない。
中途半端に燃料デブリを取り出した場合、単に燃料デブリを移動したに過ぎないことになる。長期保管をするためには密封性を確実にして保管するか、しっかり処理をして放射性廃棄物を分離し長期保管の形態にするか、いずれかの方策を取らなければならない。
――燃料デブリを取り出した後、建屋解体などの作業に着手するタイミングは。
学会の報告書では、すぐに解体に取りかかり、すべてを撤去するケース(即時撤去)、ある程度の時間を置き、放射線量が下がるのを待って取りかかり、一部を残置する方法(部分撤去・安全貯蔵)など、4つのシナリオについて分析している。廃炉の終了時期や放射性廃棄物の発生量はそれぞれ大きく異なる。
時間をかけた場合、放射能の減衰(次第に放射線量が減っていくこと)により、作業が容易になるという利点がある。放射性廃棄物の発生量も少なく抑えることができる。ただし、廃炉完了の時期は、100年先とか200年先といったオーダーになる。
東電任せにせず、国が前面に出るべき
――経済産業省が設置した有識者による「東京電力改革・1F問題委員会」(以下、東電委員会)の「東電改革提言」(2016年12月)では、燃料デブリ取り出しまでに必要な額として8兆円という数字を挙げています。これにはその後の放射性物質の処分費は含まれていません。
現在は東電が経営努力によって廃炉費用を捻出する仕組みとなっているが、廃炉作業がある程度進んだ段階で、国として財源をどうしていくのかを示す必要が出てくるだろう。
燃料デブリの取り出しなど廃炉の作業について、毎年の実施事項のフォローや実施の責任をフォローする仕組みができていない。いつまでにどこまでの作業を誰が実施するのか、そして誰に約束しなければならないのかについて、国はきちんと示すべきだ。
――福島第一原発の廃炉には途方もない年月がかかりそうです。今後の取り組み体制はどうあるべきだとお考えですか。
廃炉のために、1つの会社組織のようなものを作り、東電のみならず、国やメーカー、ゼネコンなどから人を集めるべきだと思う。東電任せにせず、日本全体でもっと積極的に取り組んだほうがいい。そして、廃炉で培った技術を世の中にもっと還元していく仕組みが必要だ。
福島第一原発は、すでに発電所として再活用する計画はなく、発電会社である東電に任せて整備することは適切ではない。国として福島第一原発の土地の利用計画をまとめ、そのうえで廃炉計画を立て、実施する仕組みや組織を作り、取り組むべきだ。
岡田 広行:東洋経済 解説部コラムニスト
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
東電、不具合のカメラ交換=デブリ取り出し、再開へ準備―福島第1原発
時事通信 / 2024年10月18日 19時47分
-
福島原発「デブリ採取より廃炉計画見直しが先決」 松久保肇・原子力資料情報室事務局長に聞く
東洋経済オンライン / 2024年10月18日 7時0分
-
原発のカメラ交換「2週間程度」 福島第1、デブリ採取で
共同通信 / 2024年10月10日 20時12分
-
東京電力が燃料デブリの取り出し装置を回収する作業を開始 福島第一原発2号機
福島中央テレビニュース / 2024年9月23日 18時18分
-
2号機燃料デブリ試験的取り出し…早ければ9月23日にも装置を一旦格納容器の外へ 福島
福島中央テレビニュース / 2024年9月20日 17時43分
ランキング
-
1お父さんは海にまいたわ…20年、父と絶縁状態の「54歳長男」が緊急帰国。「57歳長女」の仰天発言に「ギョッ」とするも一転、号泣したワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月19日 10時45分
-
2「PASMO」って10年以上使わないと失効するんですか? 母がひさしぶりに上京してくるのですが、チャージしていた「残高」もなくなってしまうのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月19日 4時30分
-
31日1000個売れる静岡市「あみ焼き弁当」の底力 深夜3時まで営業、しずおか弁当の名物695円
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 10時0分
-
4ソフトバンク系「PayPayアセット」突然の"幕引き" 運用会社が事業を終了すると、投信はこうなる
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 7時30分
-
5定年直後に世界一周はダメ…退職金の延命のために絶対行ってはいけない場所、手を出してはいけない商品
プレジデントオンライン / 2024年10月19日 15時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください