KKRとベイン、富士ソフト買収で飛び交う奇手奇策 会社の頭越しに、前代未聞の手法を駆使
東洋経済オンライン / 2024年9月26日 8時0分
そこで、ひとまずアクティビストの3Dインベストメント・パートナーズおよびファラロン・キャピタル・マネジメントなど、応募契約を結んだ大株主の持ち分32.68%を買い付ける。1回目のTOBで53%の株式が集まらずとも、一定割合をかき集められればベインによるTOB成立の公算は小さくなる。
2回目は、ベインがTOBを断念した場合に発動される。KKRよりも高値を提示したベインに売り抜ける“アテ”が外れた株主に狙いを定め、10月下旬をメドに同じ1株8800円でTOBを行う。
ベインのTOBの成否が判明した後でも応募の機会を提供することで、非公開化に必要な株数の取得を目論むほか、一般株主が売り急がざるをえない「強圧性」の問題を回避する。
2段階TOB自体は前例がないわけではないが、いずれもファンドや創業家といった大株主と、それ以外の一般株主とで買い付け価格に差をつけることが目的だ。対照的に、KKRは1回目と2回目の買い付け価格が同じであり、もっぱらベインの介入への対抗策と位置づけられている点で異例だ。
からめ手の末、富士ソフトはどこに漂着するのだろうか。今後のシナリオは3つありそうだ。
1つ目は、KKRが1回目のTOBで当初の下限株式数の53.22%を取得すること。ただ足元の株価は依然としてKKRの買い付け価格である8800円を上回っており、十分な応募が集まるかは不透明だ。
KKRが1回目で非公開化にこぎ着けられなければ、ボールはベインに渡り2つ目のシナリオが浮上する。11月にもTOBを仕掛けて首尾よく過半の株式を取得し、富士ソフトの非公開化を完了させることだ。
むろん、ベインがTOBに乗り出すかは未知数だ。ベインは実施の条件として、「金融機関からの資金調達にメドがつく」「資産査定に問題がない」「非公開化後の方針をめぐり富士ソフトの経営陣と意見が一致する」などを挙げている。ベインがTOBを見送ればボールは再びKKRへと移り、2回目のTOBを経て富士ソフトを非公開化する。これが3つ目のシナリオだ。
ベインによるTOBにはハードルも
実際、ベインによるTOBが成立するハードルは高い。会社側がベインへのTOBに賛同するためには、すでに表明したKKRのTOBへの賛同を撤回するか、両方のTOBへの応募を推奨する必要がある。
また、ベインは約15%の株式を握る富士ソフト創業家との間で交渉を進めており、一定割合こそ確保できる見通しだが、一足早く32.68%以上の株式を押さえるKKRは、ベインのTOBには応じない意向を示す。待ったをかけたことでTOBを仕掛ける時間こそ稼げたベインだが、非公開化を実現する道のりは平坦ではない。
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