中国電池CATL、江西省の一貫生産拠点を部分停止 採算割れの選鉱場、リチウム相場の低迷響く
東洋経済オンライン / 2024年9月27日 19時0分
世界最大の車載電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が、江西省宜春市に持つリチウム選鉱場の操業を停止することがわかった。
その理由は、中国国内のリチウム相場の低迷により採算が合わなくなったことだ。電池向け炭酸リチウムの直近の市場価格は1トン当たり約7万3000元(約146万円)と、1年前より約6割下落している。
これに対し、CATLが宜春市で採掘するリチウム雲母は鉱石の品位が低く、炭酸リチウムの製造コストは1トン当たり11万元(約221万円)以上と市場価格を大幅に上回る。そのためCATLは、(選鉱場の操業を維持して)今後も長期にわたり赤字を垂れ流すことはできないと判断した模様だ。
電池工場は操業を継続
CATLは宜春市に大型の電池工場も持つが、リチウム選鉱場の操業停止の影響は受けない見込みだ。というのも、電池工場で使用する炭酸リチウムはより安い供給源から調達可能だからだ。
財新記者の取材によれば、リチウム選鉱場の稼働率は直近で50%を割り込んでいた一方、電池工場はフル操業に近い状況を維持していた。
リチウム雲母の埋蔵量が豊富な宜春市は、中国の電池業界内で「リチウムの都」と呼ばれている。CATLはそこに、鉱石採掘から電池製造まで一気通貫で手がける体制を築いた。
同社は2021年9月、宜春市政府との戦略提携に調印。第1期プロジェクトとして総額135億元(約2709億円)を投じ、年間生産能力50GWh(ギガワット時)の一貫生産拠点の建設に着手した。当時の炭酸リチウムの市場価格は1トン当たり17万元(約341万円)を超えていた。
翌年の2022年4月、CATLは宜春市奉新県にある「梘下窩鉱区」の採掘権を8億6500万元(約174億円)で獲得。当時の報告書によれば、この鉱区ではリチウム金属換算で265万トン以上が採掘可能であり、投資額は21億5800万元(約433億円)と見積もられていた。
その後、CATLは宜春市で年間4500万トンのリチウム雲母の採掘と同3300万トンの選鉱を行うプロジェクトを始動。それらは2023年後半に操業を開始したが、(リチウム相場が下落したため)フル稼働には至っていない。
史上最高値から9割暴落
CATLが宜春市の一貫生産拠点を建設している間に、炭酸リチウムの相場は大きく揺れ動いた。2021年末には1トン当たり20万元(約401万円)の大台を超え、値上がりがさらに加速。2022年11月には同60万元(約1204万円)の史上最高値をつけた。
ところが、それをピークに相場は急落に転じ、最高値から9割近く落ち込んだ現在も底値が見えない状況になっている。
リチウム相場の上昇局面では、精錬コストが高くつく宜春産のリチウム雲母を使っても十分採算が合うと、電池業界の関係者の多くが考えていた。そのため数十社の企業が宜春市への進出を競い、中でもCATLのプロジェクトは投資規模でも生産能力でも最大級だった。
それだけに、同社のリチウム選鉱場の操業停止は、進出企業の目下の苦況を象徴していると言えそうだ。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は9月11日
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