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ソフトバンク、「医療AIに猛進」の知られざる内幕 孫社長が事業立ち上げを託したキーマンに直撃

東洋経済オンライン / 2024年9月27日 8時0分

アメリカの2000を超える病院にサービスを提供しており、すでにアメリカのがん患者の50%にあたる770万件のデータを蓄積しており、それらのデータは日本でも活用可能だ。

ただ進めていく中でわかったのが、アメリカにおける医療データの扱い方と、日本における医療データの扱い方がまったく違うということ。第三者に個人の医療データを提供する場合、アメリカでは病院がOKすれば電子カルテのデータを取り込むことが可能とされている。そのデータを製薬会社に提供もしているが、日本ではそれはできない。

ーービジネスモデルをそのまま日本に持ち込めない。

日本では、1人ひとりから丁寧に了解を取っていく必要がある。Agoopでも位置情報を利用する際に1人ひとりから承認を得ている。匿名化したらなんでもやっていいわけではなく、用途についても承諾を得ることで、Agoopは位置情報を多面的に活用できるようになった。

私自身が経験したことだが、がんになるといろいろな承諾書にサインをする必要がある。その中にエスビーテンパスへの承諾書も入れていくということだ。

今後、エスビーテンパスとして重要なのは、医療データという究極のプライバシーにかかわる情報を扱えるだけの厳格な体制をつくること。そのために、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を得るべく準備を進めている。

6月の発表で最初の花火を大きく上げたが、その後が静かなのは、こうしたいろいろな準備を進めているから。半年から1年で前進できるようにしていきたい。

日本用のアダプターを独自に開発

ーーまずは遺伝子検査数を増やしていくことが目標です。

国内におけるがん患者の遺伝子検査数は年間2万件と少ない。遺伝子検査は標準治療後に行う、といった制限があることがその原因の1つ。これをがんに罹患したとわかった段階で検査できるようにしていく必要がある。

同時並行で進めているのがアダプターの開発だ。テンパスでは、病院ごとに異なるカルテデータを横断して活用するためのアダプターを開発しているが、日本用のものを作る必要がある。

日本の電子カルテは、大手ベンダーである富士通、NEC、日本IBMなどが病院ごとに細かくカスタマイズしているので、アダプターの整備には相当の工数が必要になる。事前に想定していた以上に厄介な開発になりそうだ。

これが動き始めれば、お医者さんは目の前の患者の治療法について、多くの事例を基にしたレコメンドを得られるようになる。遺伝子解析も含めてマッチングして、類似の症例で効き目があった治療法がわかれば、その治療法を選択肢として示すことができる。医者にとっても患者にとっても大助かりとなるはずだ。

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