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「エンドウ豆からできたジン」世界中で注目のなぜ 仕掛け人は女性醸造家、蒸溜法は無償で公開も

東洋経済オンライン / 2024年9月28日 12時0分

だが、蒸溜所が稼働して以来、規格外のジャガイモはウォッカの原料となっている。ジャガイモ製ウォッカにはイチゴで風味をつけたバージョンもあり、規格外のイチゴが大いに活用されている。

クライメートポジティブを実現した作物

日本でも、老舗蔵元の神戸酒心館が2022年に世界初のカーボンゼロな日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ」を発売して話題になった。神戸酒心館の場合、醸造工程に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーと、カーボンニュートラルな都市ガスに転換することで、二酸化炭素排出量実質ゼロを達成した。

一方、カーボンゼロの先を行くのがクライメートポジティブ。その秘密はエンドウ豆にある。

多くの場合、ジンやウォッカのベーススピリッツは小麦などの穀物が主原料だが、栽培には化学合成された窒素肥料が大量に使用される。窒素肥料は製造工程で大量の温室効果ガスが排出されるうえ、長期にわたって使用すると土壌内の微生物のバランスが崩れ、肥沃性が損なわれてしまう。

一方、エンドウ豆などのマメ科の植物は、窒素を固定する土壌微生物の根粒菌と共生することで、空気中の窒素を栄養として利用できるため、窒素肥料を与える必要がない。炭素排出の観点からも、土壌への影響の観点からも、環境負荷が非常に低い。

自家農場で作ったエンドウ豆を使用しているアービキーの場合、原料輸送に伴う炭素排出量もごくわずか。さらに、蒸溜後の廃棄物(蒸溜かす)は家畜の飼料となる。

一般的な家畜飼料は大豆ベースのものが多いが、原料の栽培と加工で多くの炭素が排出されることを考慮すると、蒸溜かすを飼料とするメリットは大きい。

これらの要素を実質的な数値にして、ライフサイクルアセスメント(ある製品やサービスにおける環境影響評価)をみると、700mLボトル1本のNàdarの製造に伴うカーボンフットプリントは−1.54kg。つまり、削減量が排出量を上回るクライメートポジティブを達成しているのだ。

驚くほどなめらかな口当たり

このNàdarの開発は、環境に配慮したスピリッツ造りの新境地を開いたとして、イギリス・ガーディアン紙やアメリカ『フォーブス』誌をはじめ、欧米のメディアで大きく取り上げられた。

実際の飲み心地はというと、ジンもウォッカも驚くほどなめらかな口当たり。現地ではサラダなどに使われるエンドウ豆の葉の風味が感じられ、これまでにない不思議な味わいだ。飲食業界での評価は高く、今年6月にはジンとウォッカの両方が、アメリカのバーテンダー・スピリッツ・アワードで金メダルを獲得した。

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