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御社の「DXが大成功する」解決策はたった2つだ 大前提で「まずやるべきことは?」専門家が解説

東洋経済オンライン / 2024年10月1日 9時0分

動いている取り組み・プロジェクトをやめるのは、始めることよりも難しく、またそれなりの労力が必要です(写真:East & West/PIXTA)

ローランド・ベルガー、KPMG FASなどでパートナーを務め、経営コンサルタントとして「40年の実績」を有し、「企業のDX支援」を多くてがけている大野隆司氏。

大野氏のところに届く「経営層からの相談内容」が、このところ大きく変化してきているという。「DXの効果が出ない」という悩みが目に見えて増えてきているというのだ。

なぜ、こうした悩みが生じているのか。大野氏が自身の経験や大手・中小企業の現状を交えながら「DXを成功させるための2つの解決策」を解説する。

以前の記事(経営者は「DXへの過大期待」を今すぐ捨てるべきだ)で述べたように、「DXで狙う効果」は、主に以下の2つに集約されます。

【ひと目でわかる】そもそもDXには「2種類ある」のを知っていますか?

①「攻めのDX」…新しい顧客・市場の獲得や新規事業の創出などで「トップラインの伸長」を狙うもの
②「守りのDX」…「業務効率化」によって「コストの削減」を狙うもの


「業務効率化」によって「コスト削減」をはかるなどの「守りのDX」の効果を上げるには、「事業の拡大・成長のプラン」を同時に持っておくことが重要になります。

前回記事(「効率化で"不要になった社員"」活用する術ある?)で述べたように、業務効率化で浮いた従業員の再配置先として新事業が必要だからです。

とはいえ、「新事業を打ち出す」のは簡単なことではありません。

そのようなプランの準備に時間がかかりそうな企業に向けて、DXを「絵に描いた餅」にしないための「すぐできるアイデア」を2つほど提案したいと思います。

【アイデア1】効果が出ないなら「やめる」

アイデアの1つめは、「守りのDX」を「やらない」「やめる」ことです。

身も蓋もない言い方ですが、「ボトムライン」(当期純利益)への効果が見込めない取り組みに資源を投資することは避けるのが賢明といえます。

ちなみに「投資」とは「キャッシュ」以外に「人の時間」も含まれることも強く認識すべきです。

とはいえ、動いている取り組み・プロジェクトをやめるのは、始めることよりも難しく、またそれなりの労力が必要となります。

やめるためのアクションとしては、活動中のチームの解散と従業員の異動、ステークホルダーへの中止の説明、そしてDXの支援を依頼している外部業者との契約解除まで、いろいろあります。

特にシステム構築を伴う取り組みなどについては、すでに大量の予算を消費してしまっている場合もあるかもしれません。「あと数カ月で完成」という取り組みをやめることは未練が残るかもしれません。

しかし、それも「サンクコスト」と割り切り、「キャッシュの消失を最小化する」という基準で追加の投資をしないことが賢明です。

そして、これは経営のみができる意思決定でもあります。

たしかに「IR的な効果」もあるけれど…

もちろん「守りのDX」を手がける理由は、「ボトムライン(当期純利益)の効果」以外にも、いろいろあるはずです。

「IR的に有効である」「優遇税制の資格が得られる」など、企業によってさまざまでしょう。経済産業省の「DXレポート」で焦燥感をあおられた企業もあるかもしれません。

あるいは、あからさまに言わないまでも、「DXに取り組んでいることを対外的に宣言したい」といった理由も目にします。

このような理由を一概に否定するつもりはありませんが、投資額次第では株主視点においては看過できないものでしょう。

DXへの取り組みやデジタル関係への積極的な投資は、たしかにIT業界系のメディアなどで好意的に取り上げられることもありますが、それが経営にどれほど寄与するのかについては、なんとも言えません。

「DX銘柄」に選定された企業の株価が上昇する傾向にあるといった噂も、寡聞にして知りません。

DXを「絵に描いた餅」にしないためのアイデアの2つめは、「ボトムラインの効果」をいったん捨てたうえで、「大胆な目標」を設定してみるというものです。

【アイデア2】「大胆な目標」を設定してみる

冒頭でも述べたように、「守りのDX」では、「業務プロセスの効率化」をはかることがメインの活動となります。

たとえば、「顧客への問い合わせ対応に必要な業務時間を2割減」「サービスのコストを3割減」といった目標が設定されます。

この目標を「現状定めている2~3割削減」というレベルではなく「1万分の1」「コストゼロ」といった思い切ったものにしてみるのです。

あるいは、「顧客からの見積もり依頼や納期などへの回答を、現在の1万分の1の時間にする」といったものでもよいでしょう。またサービスのコストをゼロにするというものもいいかもしれません。

こうした「大胆な改善」を実現できるのも、DXならではのことです。

「守りのDX」であったとしても、これくらい「大胆な目標」を実現することで「事業の成長のきっかけ」となることが期待できます。

たとえば、スピーディーで精度が高い回答が顧客の満足度を高めることは疑いようがなく、顧客のつなぎとめや深掘りにつながります。そしてその評判が、新規顧客の獲得の誘因にもなるのです。

実際に、アメリカのフィンテック企業である「ロビンフッド社」は、株売買の無料サービスによってミレニアル世代を中心とした顧客の急速な拡大に成功しました。

業務効率化に関する取り組みもあったのでしょうが、HFT(高度高頻度取引)業者に販売してリベートを受け取る、つまり必要なコストを外部転嫁することで、無料サービスを成立させたことが大きかったのです。

ちなみに「ロビンフッド社」はこの情報を隠していたことによって2020年に制裁金を課されましたが、2021年にはNASDAQ上場を果たしています。

「大胆な目標」を設定し、実現する手法を考えていくことで、こうした「思わぬ発想」が出てくる期待も持てるというものです。

DXうんぬん以前に「相手の課題」を見つけるのが重要

また、「ロビンフッド社」のケースでは、「その手法をデジタルのみに求めていない」という点も認識しておくことが大切です。

たとえば、「機器・設備を安価に販売し材料費や保守代で稼ぐ」のは、古くからある稼ぎ方ですが、これなども機器・設備を「(無償で)業務プロセスを提供」というものに置き換えてみることで、新たな商機も考えられるでしょう。

また、「営業案件の紹介でマージンをいただく稼ぎ方」も古くからありますが、仕入れ先・協力会社・自治体といった顧客以外のステークホルダにとっては、顧客との(無料の)取引に商機を見出せる機会は多くありそうです。

つまり、「デジタルの使い方・活かし方」を考える前に、まずは「相手が持っている課題」を見つけることが重要です。

既存の顧客対応の「業務プロセスの効率化」から新しい事業やビジネスを生み出していく機会は、どの業種・企業にも見出せるはずだからです。

大野 隆司:経営コンサルタント、ジャパン・マネジメント・コンサルタンシー・グループ合同会社代表

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