堀江貴文「退職金は給与後払い」という悪しき習慣 働き盛りにもらうお金のほうが何倍も価値がある
東洋経済オンライン / 2024年10月1日 10時30分
中小企業の退職金の相場は、大卒で約1100万円、高卒で約1000万円(新卒入社で定年まで勤務した場合)。大金といえば大金だ。いざ支払うとなれば、それなりの負担にはなる。まして経営状態の思わしくない、内部留保の限られた企業ならなおさらだろう。退職金を工面するのはひと仕事だ。そうした事情を鑑みて、従業員に対する福利厚生だと勝手に決めつけているわけだ。
退職金の性質について法的に明確な定義はない。だから福利厚生だというその決めつけもウソにはならない。しかしウソにはならないが、明らかなミスリードだろう。
退職金制度がある会社は、決算報告書に将来発生する退職金額を「債務(退職給付債務)」として計上する必要がある。従業員にまだ支払われていない賃金という位置づけだ。退職金はあくまで給与の後払いなのである。
その大前提をうやむやにするような決めつけは感心しない。本人にそのつもりはなかったとしても、従業員を欺いているようなものだ。
就職、転職活動で退職金の有無を気にする人は多い。でも、退職金制度がある=労働条件が良い、というのは思い込みにすぎない。働き盛りの30代、40代ともなれば、いろんなことが起きる。結婚、育児、子どもの進学、あるいは独立・起業――。なにかと物入りだ。収入は1円でも多いほうがいい。
退職金は時代遅れな制度
定年時にもらうお金よりも、そうしたライフイベントの真っただ中でもらうお金のほうが何倍も価値がある。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)に投入できる種銭も増える。退職金に惑わされるのは愚かだ。
近年では退職金制度がない代わりに、昇給やインセンティブに重点を置く企業も増えてきた。支払うべき給与をそのつど全額支払うということだ。あたりまえだが、それが適正な雇用というものだろう。
私もかつてライブドアを率いていたとき、退職金制度は設けなかった。とうぜんそのぶん月々の給与に還元していた。そのほうが経営陣も従業員も向上心をもって職務に励める。退職金がないことがメリットになりうるのだ。
退職金という悪しき習慣が日本をダメにする。みんなそのことに気づくべきだろう。
堀江 貴文:実業家
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