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中国不動産市場で「政府のテコ入れ」効かぬ背景 広州市が住宅取得制限を緩和も、投資は戻らず

東洋経済オンライン / 2024年10月2日 19時0分

広州市南沙区は香港・マカオと連携した「大湾区(グレーター・ベイエリア)」の拠点として注目を集め、不動産投資が活発だった(写真は大湾区のポータルサイトより)

「広州市南沙区の住宅取得制限が全廃される」――。9月14日、中国の不動産市場をそんな噂が駆け巡った。財新記者の取材に応じた複数の業界関係者は、この情報は事実だと証言した。

【写真】広州市では住宅価格の下落に歯止めがかからず、不動産市場は冷え切っている

低迷が続く中国の不動産市場において、これは地方政府が規制緩和により取引の活性化を図る最新の動きだ。広州市は広東省の省都であると同時に、北京市、上海市、深圳市と並ぶ「一級都市」の一角であり、同市政府の政策は全国的な注目を集めている。

1年余り前の2023年7月24日に開催された中国共産党中央政治局会議で、各地の地方政府に不動産関連政策の適切な調整および最適化を促す指示が下った。それを受けて、広州市は一級都市の中で最も早く、思い切った対応を打ち出した。

十数年ぶりの政策転換だが……

同年9月20日、広州市政府は11の行政区のうち半数近い5区の住宅取得制限を全廃すると発表。これは同市が住宅取得制限を導入して以降、十数年ぶりの大きな政策転換である。

だが(不動産投資が活発だった)南沙区を含む6区では、従来の規制が継続された。具体的には、広州市の戸籍を持つ家庭が購入できる住宅を最大2軒に制限。また、市外戸籍の家庭が市内の住宅を購入する場合は、広州市で納付した過去2年分の個人所得税または社会保険料の証明書を提出できる場合に限り、自己居住用の住宅1軒の取得が許可される。

では今回、住宅取得制限の全廃地域に南沙区が加わることで、広州市の不動産市場にどの程度の刺激を与えるのか。業界関係者の間では「大きな効果は期待できない」という声が一般的だ。

なぜなら、目下の不動産市場の冷え込みぶりは、もはや生半可な規制緩和でテコ入れできるレベルではないからだ。

中国国家統計局のデータによれば、広州市の新築住宅価格は15カ月連続、中古住宅価格は16カ月連続で下落し続けている。「一級都市の住宅価格は永久に値上がりする」という神話は消失したと言っても過言ではない。

住宅取得制限が全廃される南沙区では、ピークの2021年7月には代表的な中古物件の成約価格が1平方メートル当たり3万9000元(約78万円)に達した。しかし3年後の2024年7月になると、同じ物件の成約価格は同1万6000元(約32万円)と約6割も値下がりした。

規制緩和は「時すでに遅し」

右肩上がり神話の消失により、不動産業界の風景は一変した。「最近の市場では、投資目的の顧客がすっかり姿を消した」。広東省で不動産ビジネスを長年営んできた企業経営者の劉琪氏は、そう証言する。

劉氏に言わせれば、不動産投資は今や(短期的な利益がまったく見込めない)赤字商売と化した。「市況が近い将来に底を打ち、回復に転じると予想する者は誰もいない。そんな中、逆張りで勝負して大もうけを狙うなんて考えられない」と、劉氏は肩をすくめる。

財新記者の取材に応じた複数の不動産仲介業者も、劉氏とほぼ同意見だった。南沙区の規制全廃の効果について、彼らは異口同音に次のように語った。

「現在の不動産市場で住宅を買うのは、自分が住むのが前提の人だけだ。投資目的の需要が消え失せた今、住宅取得制限を緩和しても時すでに遅しだ」

(財新記者:王婧)
※原文の配信は9月14日

財新 Biz&Tech

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