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石破氏の「アジア版NATO」構想はポエムに過ぎない ASEAN首脳会議で失笑買う恐れ

東洋経済オンライン / 2024年10月2日 11時0分

背景にはアメリカの軍事力・経済力の相対的な低下と、ロシアによるウクライナ侵略や中東紛争を受け、アジアに資源を集中させることができないアメリカの状況がある。

石破氏は寄稿で、アジア版NATO創設への道のりとして「現在、日本は日米同盟の他、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インド、フランス、イギリスと準同盟国関係にある。そこでは「2+2」も開催されるようになり戦略的パートナーシップの面として同盟の水平的展開がみられる。韓国とも日米は安全保障協力を深化させている。

これらの同盟関係を格上げすれば、日米同盟を中核としたハブ・スポークスが成立し、さらにはアジア版NATOにまで将来は発展させることが可能となる」と説明している。

しかしながら現況の「格子状」の枠組みや、石破氏の言う「日米同盟を中核としたハブ・スポークス」と、加盟国すべてが集団的自衛権行使の義務を負うNATOや、そのアジア版との開きは大きいと言わざるをえない。

そもそも日本が呼びかけたところで話に乗るアジアの国があるのか、甚だ疑問だ。よしんばアメリカがオーストラリア、韓国、フィリピンといった同盟国やインド、シンガポール、タイといった「友人」に働きかけたとしても、同調する国は少ないだろう。

どこが加盟してくれるのか

本家NATOはロシアという仮想敵がはっきりしている。これに対してアジア版NATOの設立は「中国を西側諸国が抑止するため」と石破氏の寄稿は説明している。

ロシアと欧米との関係と違って、アジアのほとんどの国の貿易相手国のトップは中国だ。米中対立のなかで中国寄りを鮮明にする国がいくつもある。対立に巻き込まれたくないと考える国はそれ以上に多い。反中国で旗幟を鮮明にしているのは現在、南シナ海の領有権争いを抱えるフィリピンぐらいだ。

そのフィリピンとてドゥテルテ前政権当時は中国寄りの姿勢を示していた。政権が変われば、対中政策も変わりうる。「西側諸国が抑止するため」という論理展開には最初から「アジア」が欠落している。

石破氏が寄稿のなかで挙げたアジアの国はフィリピンとインド、韓国の3カ国に過ぎない。台湾有事や中国の脅威、ロシアと北朝鮮の結託などについては危機感を表明しているものの、南シナ海の紛争勃発の危険性やインドと中国の領土紛争については触れていない。

南シナ海は、中国の公船がフィリピンの艦船に体当たりを繰り返し、負傷者も出る「いまそこにある危機」だ。一触即発の事態が続き、切迫性という点では、台湾有事や北朝鮮の核・ミサイル開発を上回る状況だ。フィリピンと相互防衛条約を結ぶ同盟国アメリカにとっても看過できない事態となっている。

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