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「第2の南北戦争」という「内戦」を回避できるのか 白人支配終焉と「憎悪の火に油を注ぐ」極右政党

東洋経済オンライン / 2024年10月3日 14時0分

ただし同州の移行にあたっては、燃えるごとき反発を避けえなかった。1994年、未登録の移民が医療や教育など公共サービスの受益を禁ずる「わが州を救え」なる提案187条項を可決したのである。移民阻止、非正規滞在の処罰を目的とする大規模法案を承認した現代初の州法となった。共和党のピート・ウィルソン知事は、移民による越境を大々的にアピールする広告を展開するなど、187条キャンペーンを推進して、再選に成功した。ウィルソンこそがカリフォルニアの民族主義仕掛人だったのだ。白人の心に巣食う恐怖心を利用し、刑事的厳罰政策に踏み切ったのが勝利をもたらした。少数派人口が増加するほどに、白人至上主義への脅威は増していき、白人からの反発は雪だるま式となる。

多から1へ

だが、マイノリティが増加していくと事態は変わっていく。マイノリティのほうが政治力を持つようになると、白人のみならず、黒人や移民にも利益のある政策が採用されるようになるからだ。州内の授業料、不法滞在者への運転免許支給などバラエティ豊かなものとなっていく。教育費の大幅増加や、刑務所数の大幅減少も手伝って、あらゆる住民福祉の満足度が向上した。30年足らずの間に、同州は反移民の看板を捨て去り、移民とインクルージョンの先進政策州へと変貌している。

ただし、カリフォルニア州にいまだ課題は少なくない。ホームレス数は全国の4分の1を占め、所得格差も4番目である。近年アジア系高齢者が襲撃される事件が多発している。ユートピアからはほど遠い。それでも、広く人種を受容するカリフォルニア州の来し方を見るならば、そこには未来への可能性がある。

真の多民族的民主主義実現のためには、国家はいくつもの深刻な危機を乗り越えなければならない。民主主義を強め、アノクラシー・ゾーンを脱し、SNSを適切に規制することで、派閥主義を抑制しなければならない。そうして初めて、第2の南北戦争を回避する曙光が見えてくるだろう。

あるいはもう一つの脅威たる気候変動にも有効な手が打てるかもしれない。地球温暖化は、自然災害の深刻度を増しており、沿岸部諸都市を危険に晒すとともに、熱波、山火事、ハリケーン、干ばつを引き起こしている。南半球から、白人国家が多くを占める北半球への移住も確実な増加を見るであろう。有効な政策を打ち出すのに手をこまねくなら、社会基盤は突き崩されることになるだろう。

私の教室にやってくる学生は課題を十分に理解している。結果、彼らはインスピレーションを受けとめて、何か行動を起こそうという気になる。彼らは、アメリカン・ドリームの新世代である。気が滅入ってくると、私は彼らのことを思い出す。世界を変えようと決意した第1世代の学生たちに満たされた教室。それほどまでに颯爽たる場はちょっと考えられない。

アメリカへの深い敬愛の念

夫のゾリと私は2020年12月にパスポートを更新した。もちろんアメリカを離れようとは思わない。私はよそへ脱出するには、あまりにこの国への深い敬愛の念を捨てきれずにいる。アメリカが世界の牽引役なら、カリフォルニアは全アメリカの牽引役である。私たちはこの場にとどまって転換の助力をなしたいと願う。アメリカは歴史の終局点に立たされているわけではないと信じる。むしろ刮目すべき新時代の始点に立っているのである。

アメリカの国璽“E Pluribus Unum”(多から1へ)を実行に移すうえで、千載一遇の好機に、今私たちは立っている。

バーバラ・F・ウォルター:カリフォルニア大学サン・ディエゴ校政治学教授

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