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「ああ、ロミオ」短いセリフに詰まった深い意味 有名なセリフには有名になる理由がある

東洋経済オンライン / 2024年10月3日 19時0分

(同書、第三幕第二場)

仮定法の中で、自分の意見はあくまで公的な立場(役割)としての意見だと冷静に伝えることで、相手の心に火を植え付けます。個人的な感情で言っているのではない、だから安心して行動してほしいと。

市民たちは何と言うか。
「よし、暴動だ」。もう単純です。

ちょっと笑ってしまうのですが、「ブルータスの家に火を放とう。行こう。さあ、一味を探し出せ」と憎しみ一色になるんです。

ここで面白いのが、アントニーは「行け!」と命ずるのではなく、「待て、聞いてくれ。まだ話すことがある」と引き留めるんです。民衆の暴動を正当化するストーリーは作れたが、まだ内面の準備が足りないと思ったのでしょう。

アントニーは最後に何を伝えたか。

実は、亡くなったシーザーは、市民たち1人ひとりに75ドラクマ(古代ギリシャの通貨単位)という、高額なお金を分け与えるつもりだったと言うのです。シーザーは、市民1人ひとりにお金を用意していた、そこまで市民たちのことを想って尽くそうとしていた……。

民衆の心が1つになります。もう市民たちは完全にアントニーの思い通りに行動します。一度動き出した群衆を止めることは誰にもできません。さて、ローマはどうなるのか?

これは実際の戯曲で読むとめちゃくちゃアガる場面なので、ぜひ読んでほしいところです。シェイクスピアは用意周到で、こんな風に、ストーリーで相手を動かすこともします。特に相手を行動させる時ほどそうします。そうでないと人は動かないとわかっていたんですね。

「ああ、ロミオ」にぜんぶつまっている

ここで、みなさんご存じの言葉もご紹介しましょう。『ロミオとジュリエット』です。中でも一番有名なセリフ、何が思い浮かびますか? 絶対聞いたことあるはずです。そうです、それです。

ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?

(『ロミオとジュリエット』第二幕第二場、松岡和子訳、ちくま文庫)

この言葉、音として耳に残りますよね。ちょっとみなさん、言ってみてください。

ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?

なんかちょっと、気持ちいいですよね。「言いたくなる」リズミカルな言葉は世の中に普及するということを、シェイクスピアはわかっているんです。それだけ聞いてもよくわからないけど、確実に耳には残る言葉です。

ロミオとジュリエットはお互い激しい恋に落ちますが、それぞれがモンタギュー家とキャピュレット家、憎み合う家同士だったので、絶対に愛し合ってはいけない。そんな設定をイメージしながら、この言葉をもう一度味わって見ましょう。

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