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「要介護の親が住むゴミ屋敷」4時間で迎えた結末 介護で疲弊した子にかかる「片付け」という負担

東洋経済オンライン / 2024年10月5日 10時0分

決して薄情なわけではなく、親への愛情は間違いなくあった。ただ、それを上回るしんどさが介護にはあるのだと、二見氏も再認識したという。

ゴキブリが老人の体を這い、糞尿にまみれた部屋

次は、要介護者が一人で住んでいてヘルパーが出入りしているパターン。ヘルパーが週に何度も訪問しているのであれば、部屋も散らかることはないと思ってしまいそうだ。ただ、そううまくはいかない。

「私たちもこの仕事を始めたばかりのときは、ヘルパーさんが出入りしているのにゴミ屋敷化している家を見て、 “なんで片付けてあげないんだろう?”と疑問に思っていました。でも、ヘルパーさんは家政婦ではないので、勝手にゴミを捨てたりモノを片付けたりすることはできないんですよ」(二見氏)

要介護者に「片付けてほしい」と頼まれたとしても、応じられないという問題がある。そもそもサービス外の作業であるし、よって部屋を片付けるための時間は確保していない。次の家に訪問する時間も迫っているので、スケジュール的にどうしても無理なのだ。

生ゴミが散乱しているなど業務に支障をきたす場合は、現場のヘルパーがケアマネジャーに報告し、ケアマネジャーからイーブイに依頼の連絡が来る。ただ、それも介護支援事業所の個々が判断することだ。

二見氏が以前、一人暮らしの高齢女性から片付けの依頼を受けて大阪市内にある団地の一室へ見積もりに行った際、こんなことがあった。

「チャイムを鳴らしても誰も出てこないので扉を開けたんです。そうしたら、玄関におばあちゃんが横たわっていて、“暑くてしんどい”って言うんです。家の中は生ゴミだらけで、おばあちゃんの体には何匹もゴキブリが這っていました。人工肛門で生活されている方で、家の中は糞尿だらけでした。ヘルパーさんも出入りしていたみたいですが、状況は改善されず、耐えきれなくなって自分で連絡してくれたんです」

これには別の問題もある。介護報酬目当てで契約先を増やし、一件あたりのサービスの質を著しく落とすことで利益を出しているような業者も中にはある。

ゴミ屋敷清掃は、終わりではなく「始まり」

昼休憩を挟み、午後は1階に残った冷蔵庫などの家電を搬出し、2階の作業に取りかかる。困っているから片付けを依頼したのに、家の中が空になってくるとなぜか寂しさが込み上げてくる。作業時間が4時間に近づいてきた頃、依頼者の明子さんが話し始めた。

「ゴミ屋敷清掃の動画を見ていると、誰かのお母さんでも、どこかで働いている会社のお偉いさんでも、その人生がいったん別の形になるから、“お疲れさまでした”っていう気持ちになります。次の段階に進まれるわけですから。知らない方でもそういう気持ちになる。

今回はひとりでバイクに乗ってお買い物に行っていた頃から知っている方(この家に住んでいた80代の女性のこと)なので、寂しいですね。

逆に忙しくて部屋が汚くなってしまって、もう一回人生やり直すために引っ越しする方には、“頑張ったね”って気持ちになるんです。だって、新しいスタートじゃないですか。今までは悩んだり下向いたりしていたけど、イーブイさんに来てもらってみなさん声が明るくなったり、力が入ったりしているじゃないですか。門出ですよね」

部屋に住んでいた人の歴史が徐々になくなっていく。しかし、その後には新しい生活が待っている。ゴミ屋敷の清掃は、終わりではなく、始まりである。

【写真】「どうやって生活していたのか…」足の踏み場もない実家が4時間で片付いた!【ビフォーアフターを見る】(43枚)

國友 公司:ルポライター

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