1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「大学お笑い」出身芸人の増加で変わる業界勢力図 純粋にお笑いを追求する人が進める健全化

東洋経済オンライン / 2024年10月8日 15時0分

私自身も何度か学生芸人のお笑いコンテストの審査員を務めたことがある。大規模な学生お笑いコンテストの決勝に残るような芸人のネタは、本当にクオリティが高くて面白い。

学生芸人を経ることの強み

学生芸人を経てプロになる人の強みは、豊富な舞台経験を持っていることだ。芸人の芸は現場で磨かれる。生の観客の前でネタを演じて、その反応を見てネタを調整していく。その過程を経て、舞台慣れをしていき、演技力が磨かれ、質の高いネタを作れるようになる。

しかも、そこには同じ学生芸人の仲間がいる。日常的に彼らと情報交換をしたり、ネタの相談をしたりすることで、プロの芸人の疑似体験ができる。プロとしてデビューする前にそれだけの経験を積むことができるメリットは計り知れない。

ただ、そうは言っても芸の道は険しい。お笑いを趣味でやっているアマチュア芸人と、それを生業とするプロの芸人の間には大きな壁がある。学生芸人として活躍していても、プロになった途端に伸び悩んで苦戦するケースもある。

そもそも一昔前までは、大学を出た若者が芸人を目指すこと自体が珍しかった。大卒という立派な学歴を持ちながら、あえて厳しい芸の道に踏み出す彼らは、より意識が高いとも言える。

学生芸人の中から未来のスター候補を探す

ディープな野球ファンは、プロ野球だけでなく高校野球や大学野球にも注目していて、そこで未来のスター候補を見つけたりするのを楽しみにしている。

学生芸人の世界でもすでにそういう現象は起こりつつある。学生芸人の面白さに目覚めて、熱心にライブに通うファンもいるし、そこから次の令和ロマンやラランドが出てくるのではないかと期待している人もいる。

お笑い界全体で大学お笑い出身者は増えているし、大卒者の割合も少しずつ増えている。そのことでお笑い界全体の空気も変わっていく可能性がある。

文部科学省が発表した2023年度の学校基本調査では、大学進学率は
57.7%であり、8年連続で過去最高を更新した。いまや若者の2人に1人以上が大学に進学する時代なのだ。

一昔前までは、大学を出てお笑いの道に進む人はほとんどいなかったので、奇異の目で見られることが多かった。特に、偏差値の高い有名大学を出て芸人になるような人は、業界内では変わり者として扱われるようなところがあった。

今では世の中全体でも大学に進む人が多くなっているし、お笑い界でもそれが珍しいことではなくなった。

一流大学を出て就職もせずに芸人になるような人は、大企業に就職して安定した収入を得る道を捨てて、自分の夢を追っている。そういう人はお金のためにお笑いをやるのではなく、やりがいを求めて芸人の仕事をやっている。

一攫千金狙いが減少

学歴がない人が一攫千金を狙って芸人になる、というような現象が今では少なくなり、純粋にお笑いが好きな人がお笑いをやる時代になった。そのことでお笑い界の健全化がますます進んでいる。モテたい、稼ぎたいといった下心が入り込む余地がなくなり、純粋にお笑いを追求する人が増えていく。

一方、そのことでハングリー精神のようなものがなくなり、ガツガツしたタイプの芸人が減っていくおそれもある。

これから大卒者がどんどん増えることで、お笑い界の勢力図がどう変わっていくのか、そこでお笑いの中身にどういう質的な変化があるのか。今後はそれも気になるところだ。

ラリー遠田:作家・ライター、お笑い評論家

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください