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「日本の洋上風力発電」に決定的に足りないもの 国主導の海鳥調査による基礎データが圧倒的に不足

東洋経済オンライン / 2024年10月8日 11時0分

――日本で海鳥のモニタリング調査は行われていないのですか。

2018、19、20年に環境省が「風力発電における鳥類のセンシティビティマップ」を作るための調査を行いました。ただ各地で短期的にデータ収集をした3年間のプロジェクトで、欧州各国のデータとは努力量が圧倒的に違います。

――欧州各国では、どうして船舶や航空機を使い広大な海域を対象に何年にもわたって海鳥の調査を行ったのでしょうか。

イギリスでは1970年代に海底油田の開発が始まって、環境影響をきちんと調べなければということで、緊急的に開始されたということです。同時期に北海周辺の欧州各国でも調査が開始されました。背景には、欧州では各国の国内法のほかに鳥類保護指令などEU環境法による規制が厳しいということがあります。

――油田開発をきっかけに海鳥モニタリング体制が構築されたということですか。

簡単に言うと、イギリスの場合は王室が海面や海底を管理しているので、事業者が洋上に風車を建てたい時には王室から海面を貸してもらいます。王室からすると、自己資産の管理という意味でも、埋蔵資源がどこにあるかとか、ほかの産業と摩擦がおきないか、自然環境への悪影響はないかなどを考慮して、どこの海域を割り当てたらいいのかあらかじめ知っておく必要があります。

また、自然環境や自然史、あるいは科学について国民の理解が深く、あらゆる産業を進める際にも自然環境への影響をきちんと調べ、科学的な根拠にもとづいて慎重な検討がなされます。

海鳥の渡り・越冬経路と促進区域が重なるケース

――そもそも海鳥というのは、海と陸でどのように生活しているのですか。

海鳥は世界に300種以上いて、海の沿岸から沖合まで広範囲に分布しています。海の表層のエサを採る種もいますし、深く潜水して海の中にいるエサを採る種もいます。春から夏にかけての繁殖期になると、離島などに集まって巣をつくり、巣と採餌場所を何度も往復します。その後、秋から冬にかけてはエサの豊富な海域に移動します。

――風間先生はカモメ類についての調査を続けられ、越冬・渡り中継地や飛行経路と促進地域が重なる場所がある、と指摘されています。

現在収集しているデータによれば、日本海側で促進区域が定められた場所には、カモメの渡り経路と重なるところがあります。私は大学4年の時からカモメの生態研究を続けてきて、今21年目なんです。春から夏まで利尻島に家族とともに住んで、日本で繁殖する2種類のカモメ、オオセグロカモメとウミネコを調べています。

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