1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

中国自動車「吉利汽車」、規模拡大から集約に軸足 創業トップが主導し、一部事業の廃止・再編も

東洋経済オンライン / 2024年10月9日 16時30分

吉利控股集団は創業トップが主導して経営の方向性を大きく変える。写真は「台州宣言」を発表する同社の李書福・董事長(吉利のSNS公式アカウントの動画より)

中国の民営自動車大手、吉利控股集団(ジーリー)の創業者で董事長(会長に相当)を務める李書福氏は9月20日、同社の新たな経営指針「台州宣言」を発表した。

【写真】吉利が出資する空飛ぶクルマの開発企業の試作機

新指針では、事業領域を戦略的に拡大してきた従来の路線から、事業を戦略的に集約(して効率を重視)する路線への転換を表明。一部事業の廃止・再編にも踏み込み、野放図な事業拡大は行わないとしている。

台州宣言の命名の由来である浙江省台州市は、吉利の創業の地だ。李氏はここで1986年に同社の前身を設立。冷蔵庫やオートバイなどの製造を経て、1997年に自動車事業に進出した。

吉利は2010年にスウェーデンの乗用車メーカー、ボルボ・カーの買収に成功し、その後の急成長のきっかけをつかんだ。2017年には(外資系合弁メーカーを除いた)中国の独自ブランド車メーカーの販売台数ランキングでトップに立ち、5年連続で首位の座を維持した。

EVシフトでBYDの後塵拝す

だが、2022年に比亜迪(BYD)に追い抜かれて以降、両社の販売台数の差は開きつつある。BYDの2024年1月から8月までの累計販売台数は232万8000台と、前年同期比29.9%増加。これに対し、吉利の販売台数は201万1000台、前年同期比の増加率は21.6%だった。

ここ数年のBYDの躍進は、中国自動車市場の急速なEV(電気自動車)シフトの流れをしっかりつかんだことが大きい。同社は2022年4月にエンジン車の生産停止を発表し、EVとPHV(プラグインハイブリッド車)に経営資源を集中した。

ここまで大胆な決断は、吉利ができなくても無理からぬところがある。とはいえ、結果的にEVシフトへの対応が遅れたのは明らかな失策だった。

吉利の創業者の李氏は、かつては「自動車狂」と呼ばれたほど自動車事業にのめり込んでいた。

しかしこの数年、李氏は自動車事業の日常の舵取りを腹心に任せ、自らは投資事業(を通じた事業領域の拡大)に関心が移っていた。吉利系ファンドの現時点の投資先は、自動車関連だけでなく人工衛星、スマートフォン、空飛ぶクルマ、金融など多岐にわたる。

ところが、中国自動車市場が2023年から激烈な価格競争に突入したことが、李氏の危機感を呼び覚ました。2024年に入ると、李氏は(吉利のイベントなどの)公の場にたびたび姿を現すようになり、今回発表した方針転換を自ら主導する決意を固めた。

利益相反や重複投資を解消へ

新経営指針の台州宣言は、自動車事業への戦略的集中、事業領域の整理・統合、部門間のより深い協業、健全で持続可能な経営、人材育成の強化という5本柱を掲げる。また、クルマの電動化とスマート化を揺るぎなく進めると同時に、エンジン車の競争力も継続して高めるとしている。

吉利は今後、グループ傘下の各事業を精査し、それらの位置付けや資本関係をはっきりさせたうえで、統廃合を進める考えだ。各事業間の利益相反や重複投資などを解消し、限られた経営資源の効率的利用を目指す。

「その実行は、一部の事業を廃止・再編することを意味する」と、李氏は明言した。だが、具体的にどの事業が対象になるのかについて、吉利は明らかにしていない。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は9月21日

財新 Biz&Tech

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください