心臓移植のため訪米する日本人を待ち構える困難 現地で待機し、脳死患者の心臓を急いで持ってきて…
東洋経済オンライン / 2024年10月9日 16時50分
ドラマや漫画で、「心臓移植の手術を受けるためにアメリカへ行く」というエピソードを見たことがある人も多いのではないだろうか。そして、こう思った人もいるはず。なぜ、心臓移植のためにわざわざアメリカへ行くの? 日本で心臓移植を受けることはできないの? 実はこれ、現実でも実際に起こっている問題。その疑問への答えや、日本の医療の問題点について、『本物の医学への招待 驚くほど面白い手術室の世界』を出版した、本物の外科医・北原大翔氏が赤裸々に語る。
医療費が高額なのに、なぜアメリカで心臓移植を?
なぜ、心臓移植をするためにわざわざアメリカまで行くのか。
「太ってないのに糖尿病」の人に足りない栄養素 「健康診断の数値」が正常でも安心できない
そもそも、アメリカの医療費は高額だ。ICU(集中治療室)に入院すると1泊100万円以上かかることもあるし、心臓移植を受けるとなると、プライベートジェットでの移動費や、薬代、手術費、現地でのコーディネート代など、諸々の費用がかかる。アメリカの保険に入っていないため、それらは全額自分で払わなければならない。結果、なんと数億円という莫大な費用がかかることになる。
もっと安い値段で心臓移植を行っている病院は、アメリカ中を探せばあるかもしれない。ただし、基本的には日本からの渡航移植を受け入れてきた実績のある病院や、日本とつながりのある病院にお願いするため、いくつかの病院を比べて一番治療費の安いところを選ぶ、というのは現実的にむずかしいだろう。
人々がそうまでしてアメリカで移植手術を受けようとするのは、日本で行われる心臓移植の数が圧倒的に少ないからだ。アメリカで1年間に行われる心臓移植は約4000件。一方、日本は約100件(2023年)。その差は40倍以上だ。子どもは特に移植件数が少なく、日本で待っていてもなかなか見通しがつかないため、移植を受けにアメリカに行くことがある。
ちなみに、お金をたくさん払えば優先して早く移植を受けられるわけではない。ほかの人と同じ条件で、アメリカに着いてからもなお待つことになる。ただし、心臓移植件数が多いので、待つ時間は日本に比べてものすごく短いのだ。
現在問題となっているのは、アメリカに行った後も、移植を待つ間に入院が必要になったり、移植後に入院が長引いてしまったりして、予定以上の費用がかかってしまうこと。
その場合は、最初に払った費用に追加で払わなくてはいけなくなる。しかも数億円を、だ。渡航移植超高額問題である。これに対する一番の解決策は、日本で心臓移植がたくさん行われるようになることではないだろうか。
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