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自由が丘に爆誕「都市型イオンモール」が持つ課題 開業から1年、多くの魅力を持つ施設だが疑問点も

東洋経済オンライン / 2024年10月11日 9時40分

10月20日に、開業から1年を迎える「自由が丘 デュ アオーネ」。イオンモールが手がける「新都市型モール」であり、多くの魅力を持つ。が、まだブラッシュアップの途上にもあると言えそうだ(著者撮影)

「自由が丘 デュ アオーネ」が、10月で開業から1年を迎える。イオンモールが手がける「新都市型モール」として誕生した施設だ。

【画像22枚】素敵…!「自由が丘 デュ アオーネ」の内観や、開放的な屋上

イオンモールのプレスリリースによれば「ふとたどり着く“自然と自然に落ち着ける場所”をめざしてまいります」とのことで、地下2階から地上4階建ての施設の中には広々としたウッドデッキや植栽などが配置され「自然」が意識されている。

同地には元々スーパーマーケットの「ピーコックストア」があり、その跡地にデュ アオーネが誕生した。ピーコックはイオングループで、グループ内でスーパーからモールへの業態転換が図られた形となる。

モノを買う「機能重視」のスーパーマーケットから、イベントや街歩きを楽しむ「体験重視」のモールへと変わったといえるだろう。実際、3階テラスではたくさんのイベントが行われているし、モール内に再出店したピーコックストアの中心には「コミュニティスペース」も置かれ、食育イベントなどが開催されている。

開業から1年の「自由が丘 デュ アオーネ」。今回は、この施設を訪れながら、利用者の声なども踏まえて「開業1年の通知表」を作ってみたい。

「ちょっといい店」と、開放感のある空間設計

デュ アオーネの前に立つと、ここがイオンモールの店であることはすっかり忘れてしまいそうだ。

【画像22枚】「自由が丘にこんな施設ができて嬉しい」「でも店のセレクトはちょっと微妙?」…。まもなく開業1周年の、都市型イオンモール「自由が丘 デュ アオーネ」の魅力と、筆者が感じた疑問点

至る所に植栽が植えられ、スタイリッシュな外観だ。自由が丘という街に、マッチしている感じ。

中に入ると、白を基調とした1階には「丁寧な暮らし」が送れそうな店がたくさんある。

お米や食雑貨を使う「AKOMEYA TOKYO」にサラダボウルの「WithGreen」、セレクトワインショップの「ENOTECA」など、「ちょっといい」ショップが並ぶ。すでにこのテナント選定から施設の方向性が見えてくる。

さらに上の階に上がってみよう

エレベーターで2階にあがってみる。2階フロアは半屋外の空間で、テラスのようにもなっており、椅子やベンチなどが並べてある。そこで休みながらおしゃべりしている人もいて、なかなかスローでいい空間。

階段で3階にあがってみると、さらに広いテラスが視界に入ってくる。日によってはここでイベントなどをやるらしい。私が訪れたときは、ここに並ぶいくつかのテーブルで勉強をしている人もいて、ちょうどいい滞留空間になっているようだ。

テラスを巡りながらさらに上にいくと、屋上には「Harappa」という空間が現れる。その名の通り、小さな野原なのだが、そこからは天気がよければ丹沢山系や富士山も見ることができる。自由が丘にいることを忘れてしまいそうな眺望である。

自由が丘に「大型商業施設」ができる意味

自由が丘は関東大震災後に区画整理が行われたエリアで、それまでは農村地帯だった。

「自由が丘」という地名は、1927年にこの地に誕生した「自由ヶ丘学園」に由来する。かつては幼稚園・小学校(旧制)・中学校(旧制)にわたる大きな学校で、この中の幼稚園・小学校は「トモエ学園」の源流にもなった。黒柳徹子などを輩出した学校としても知られ、『窓ぎわのトットちゃん』の舞台にもなった学校だ。

実は「自由が丘 デュ アオーネ」、この自由ヶ丘学園が元あった場所に建っている。敷地内にはそれを記念する石碑も建てられている。

自由が丘学園は自由闊達の風潮を重んじ、街全体も文化的な香りを持つようになる。そのため、多くの文化人や芸能人もこの街に住むようになり、「自由が丘」ブランドが確立されたのだ。

こうした経緯もあってか、現在でも自由が丘では個人経営の店が軒を連ねており、個性的な街並みを作っている。現在、自由が丘駅前では再開発が進んでいるが、この主体も地元商店街であり、再開発としては珍しい事例である。

こうした経緯もあり、大規模な商業施設があまり建ってこなかったことも自由が丘の特徴の一つ。

そのことは、街としては面白いのだが、一方それゆえの弱点もある。個人店の場合、どうしてもそこに入るのにはハードルが高い。だから、気兼ねなくふらっと入れる場所が少なくなりがちだ。

実際、SNSなどでは「デュ アオーネができて、気兼ねなく街中でトイレに行ける場所ができて嬉しい」なんてポストも。座る場所もたくさん確保されているから、ある意味で自由が丘の街にあるようでなかった施設なのかもしれない。

「ファミリー層向け」は本当か?

しかし、「自由が丘の街にある施設」という点で捉えると、施設を見ていて、思わず「?」となってしまう部分もあった。

それが、以下の2点だ。

① 施設のターゲットが曖昧なこと
② 店舗が「自由が丘」にマッチしていないこと(ターゲットがずれている)

まずは①から説明しよう。

強く感じたのは「ここは、誰向けの施設なんだろう」ということ。

プレスリリースによれば、この場所のメインターゲットは30〜40代ファミリー層だという。実際、施設には子連れも多くいた。しかし気になったのは、建物内の移動だ。エスカレーターやエレベーターはあるものの、特にエレベーターなどはかなり見つけづらい位置にあり、目立つのは階段ばかりなのだ。

実際、建築的にも階段はかなり前面に押し出されているが、小さい子どもがいるファミリー層にとっては、階段が中心だと少し不安に感じる部分も多いのではないか。

屋上のHarappaについては、階段1カ所を登ることでしか行けないので、行くのはかなり大変である。

また、店舗ラインナップについても「ファミリー層向け」というには「?」なラインナップである。ファミリー層向けで家族みんなが楽しめる、というよりはオールドエイジ向けのかなり落ち着いた印象のある店舗が多い。

ただ、4階には学習塾のTOMASがあり、子どもが塾で勉強している間に親がそこにあるカフェなどで休む……想定をしているのかもしれないが、その割にはカフェは1軒だけで、長時間ここで待つ、という感じもしない。

このように考えても、ターゲットと施設の作りがちぐはぐな感じを受けてしまう。

実際、ネットでレビューを検索していても、「店のチョイスは、ちょっと微妙かも?」といった声は複数確認することができる。

ペットタウン・自由が丘なのに…

次に②だ。そもそも、施設の方向性自体が、自由が丘という街にふさわしいのかどうか。

例えば、それは「ペットの立ち入り」がかなり厳しく管理されている点に感じる。ペットを連れて入ることができるのは2階のレストランのテラス席のみで、それ以外はキャリーに入れてもNGなのだという。

しかし、自由が丘を歩いているとわかる通り、この街にはペット連れが多い。それを証明するかのように、自由が丘の駅周辺には多くのペットショップが軒を連ねている。

Googleマップで検索してみれば、自由が丘の駅周辺にはペットショップとその関連施設が11個ほどヒットする。同じ範囲で新宿を見てみると、おおよそ6店舗ほどだから、その多さが際立つ。そんな自由が丘において、ペット連れが入れないのはかなり痛手なのではないか。

リリースでは「地域の人々・来街者の方々が憩い集える、開放感あふれる屋外空間」が押し出されているが、少し疑問符が付いてしまうところだ。

実はスーパーマーケットタウンな自由が丘

さらに「自由が丘」という街の特徴を考えたとき、もっとも難点だと感じたのが地下2階にある「ピーコックストア」だ。

中を覗いてみると、ピーコックらしく高級路線やオーガニック食品が並んだ棚もある。ただ、同時にお惣菜が安く売っているコーナーもあり、「なんでも売っている」感じ。それゆえ、それぞれの商品種が中途半端に売られている印象も拭えず、結局全体としてどこを目指している店舗なのかが曖昧になってしまっている。

こんなことを指摘するのは、自由が丘の街全体を見回したときに、「ピーコックストア」よりも色がはっきりしていて、集客もできているスーパーがたくさんあるからだ。その近隣には、「東急ストア フレル・ウィズ」や「成城石井」「食品館あおば」「Picard(ピカール)」など、多くのスーパーマーケットがある。

特に東急ストア フレル・ウィズ 自由が丘店は、私が訪れたとき、驚くほど混んでいた。

近年、駅前スーパーはどこも苦戦を強いられているが、ここはまったくそうではない。平日の午後3時ぐらいなのに、通路をスムーズに通れないぐらい人がいるのだ。

その理由は一目瞭然で、ピーコックストアに比べて、徹底的に庶民的な商品・値段でさまざまなものを売っている。特にペット用品にも力を入れていて、ちゃんと特設コーナーがある。先ほども書いたように、自由が丘ではペット商品の需要が多いから、それに合わせているのだろう。まさに「地域密着」のスーパーなのである。

自由が丘には他にも、食料品の広大な売り場を誇る「食品館あおば」、輸入食材をメインで扱い高級路線を貫く「成城石井」、さらにはガチのフランス食料品スーパー「Picard(ピカール)」、さらにさらにコストコの再販店「レ・コスティ」など、色がはっきりしているスーパーが揃っている。

そう考えると、ピーコックの立ち位置は中途半端だし、そもそも論として、デュ アオーネにスーパーは必要あったのか?とさえ思えてしまう。

実際、ネットでの評判などでは「前あったピーコックのほうがよかった、今は東急ストアに行ってる」などといった投稿もあって、施設全体としてスーパーマーケットの立ち位置が曖昧になっている様子が見て取れる。また、ピーコックの入り口は狭く、正直、建物を見ただけではピーコックがあることは強く意識されないのだ。

デュ アオーネにある他のテナントも踏まえると、そこにはピーコックのような日常生活のための場所ではなく、いっそ遊びや観光目的に振り切った施設を入れてしまってもいいのではないだろうか? そのほうが施設全体の「色」がはっきりするようにも感じたのである。

このように、デュ アオーネで感じたのは、ターゲットにマッチしていないこと、さらにそもそものターゲットが自由が丘となじんでいないのでは?ということ。この2点が最大の難点だと思ったのだ。

自由が丘になじむ商業施設になれるか?

……と、やや辛口になってしまったけれど、大前提として植栽がたくさんあり、見晴らしもいい施設の空間自体はとてもいいものだと感じた。先ほども書いたように、自由が丘にはこれまでなかったような広々した空間であることも確かだ。

その素晴らしい空間を活かし、より自由が丘に根差したターゲットに深く刺していくことが、さまざまな施設のあるこの街で長く続ける秘訣になるのではないか。

開業して1年ということもあり、その方向性はブラッシュアップされている最中だろう。2年後、3年後、さらには10年後と、自由が丘の街とともにこの施設がどうなっていくのか、見守っていきたい。

【画像でもう一度見る】まもなく開業1周年の、都市型イオンモール「自由が丘 デュ アオーネ」。その魅力と、筆者が疑問を感じた「階段」「店のチョイス」「ピーコック」…などなど

谷頭 和希:チェーンストア研究家・ライター

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