「携帯ショップの王者」買収が映す通信業界の苦境 "官製値下げ"が転機に、将来はさらなる再編も
東洋経済オンライン / 2024年10月11日 7時5分
ティーガイアの売り上げの8割はモバイル事業が占める。同時期に公表された2023年3月期の営業利益は前期比33.8%減の69億円。2期連続の大幅減益となり、2年間でおよそ半減した計算となる。
この数年、業界を直撃していたのが、官製値下げの影響だった。
通信業界が転機を迎えるきっかけになったのは、2020年秋の菅政権誕生だ。菅政権は、公共の電波で事業を運営しているキャリアが寡占市場を形成し、携帯料金が高止まりしていた点を問題視して、各社に値下げを要請した。キャリア側は、メイン、サブブランドでの利用料金を引き下げるとともに、「ahamo」(ドコモ)といったオンラインで申し込みが可能な格安プランも次々と導入した。
官製値下げがもたらした“副作用”
ただ、値下げが消費者に恩恵をもたらした裏側では、販売代理店に対する「副作用」も起きていた。
低廉な料金プランが普及した結果、キャリアの通信収入は下押しされ、キャリアからの手数料収入に依存する代理店にしわ寄せが広がった。オンライン手続きの普及もあり、リアル店舗の重要性も相対的に低下。キャリア最大手のドコモは2022年にショップ数を約3割削減する方針まで掲げ、業界に衝撃が走った。
官製値下げを抜きにしても、業界では端末販売が縮小傾向にあった。消費者にスマホが広く普及して新規獲得が鈍化したことに加え、端末の高機能化や円安による価格高騰で、消費者の買い替え期間が長期化したためだ。MM総研によると、2023年度の国内携帯電話端末の総出荷台数は前年度比16.4%減の2668.5万台と2000年度以降最少で、今後もしばらく停滞が予測される。
ティーガイア関係者は「10年前から将来的に成熟期が来るのは見えており、モバイルに依存しない会社を目指していたが、ここ数年、想定よりも市場変化のスピードが速かった」と振り返る。
市場環境の変化を踏まえ、ティーガイアも店舗や人員の整理といったコスト削減を進めてきている。キャリアショップ数は今年6月時点で994店舗と、2021年3月時点(1217店舗)と比べて2割弱減少した。今年5月には45歳以上の社員を対象にした希望退職を募ると発表し、募集していた「200人程度」を大幅に上回る約240人が9月末で退職した。
コスト削減策も通じ、2025年3月期の営業利益は前期比9.3%増の88億円と増益を見込む。ただ、「値下げ前」の利益が安定的に150億円前後だったことを踏まえると、依然として停滞状態からは抜け出せない。
この記事に関連するニュース
-
【9月M&Aレポート】115件で前年同月比38件増、金額は前年同月比2.27倍の7538億円
PR TIMES / 2024年10月10日 12時15分
-
オートバイ販売“勝ち組”が外資系ファンドに買収されたワケ。競合のバイク王、イエローハットは厳しい状況
日刊SPA! / 2024年10月10日 8時53分
-
携帯販売ティーガイア、ベインが1株2670円でTOB 非公開化へ
ロイター / 2024年9月30日 15時38分
-
スノーピークはキャンプブームを読み違えた…業績急拡大の反動でコロナ後に急落悪化
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月25日 9時26分
-
富士ソフト「物言う株主」に翻弄された数奇な運命 ファンドの争奪戦で創業家と会社が対立構図に
東洋経済オンライン / 2024年9月12日 8時0分
ランキング
-
1「謎」が多い楽天のメッセージングアプリ LINEに代わる存在になるのか、本部を直撃した
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月11日 5時15分
-
2商品棚を1mずらしただけで常連が消えた…過疎で「廃業やむなし」の田舎商店を"東京のヨソ者"が復活させるまで
プレジデントオンライン / 2024年10月11日 9時15分
-
3「関西最後の一等地」さらにパワーアップへ「元・貨物駅」が大変貌 ! 温泉も開業予定
乗りものニュース / 2024年10月10日 14時12分
-
4「外圧」受け転身図るセブン&アイHD…買収提案に根強い反対、市場は「イトーヨーカ堂切り離しで阻止する作戦」
読売新聞 / 2024年10月11日 7時20分
-
5「携帯ショップの王者」買収が映す通信業界の苦境 "官製値下げ"が転機に、将来はさらなる再編も
東洋経済オンライン / 2024年10月11日 7時5分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください