歴史的トラウマを直視したハン・ガン氏の文学 ノーベル文学賞受賞者が構築した世界
東洋経済オンライン / 2024年10月11日 13時0分
歴史的暴力の前に立つ人間の存在。その痛みから決して目をそらさないという切実な意志。小説家ハン・ガンさん(54)が激しく構築した世界が結局、人間的普遍性に到達した。
スウェーデン・アカデミーは2024年10月10日(現地時間)、2024年のノーベル文学賞受賞者としてハン・ガンさんに授与すると発表した。ハン・ガンの文学を「歴史的トラウマを直視し、人間の生活の弱さを明らかにした強烈な詩的な散文」と評価した。
韓国で2人目のノーベル賞
韓国人がノーベル文学賞を受賞したのは歴史上、ハン・ガンさんが初めて。ノーベル賞としては、2000年に平和賞を受賞した故・金大中元大統領に次いで2人目だ。
ハン・ガンさんは受賞に際し「非常に驚き、光栄に思う」と述べた。彼女は受賞者発表後、ノーベル委員会との電話インタビューで「幼い頃から影響を受けた多くの作家たちの努力と力が私にインスピレーションを与えた」と明らかにした。
ハン・ガンさんは1994年、ソウル新聞の新春文芸に短編小説「赤い錨」が当選し、小説家としての第一歩を踏み出した。これに先立ち、1993年「文學界」冬号に詩を発表し、詩人として先にデビューしたハン・ガンさんは、今も詩と小説の作業を並行して行っている。
最近も季刊「文學界」秋号(147号)に詩「(苦痛に対する瞑想)」ほか1編を発表した。1970年11月、光州で小説家ハン・スンウォンの娘として生まれ、延世大学国語国文学科を卒業した。
ハン・ガンさんは、世界の舞台で韓国文学の地位を高めた「K文学の旗手」でもある。幼少期の暴力のトラウマで肉食を拒否するようになった女性が徐々に死に近づく過程を描いた代表作「菜食主義者」が2016年、英国ブッカー賞インターナショナル部門を受賞し、韓国文学の新たなマイルストーンを築いた。
2023年は長編「別れを告げない」でフランスの4大文学賞であるメディチ賞を受賞した。済州4・3事件の悲劇を3人の女性の視点で描いた小説だ。
歴史の悲劇を視点に
韓国の現代史から題材を取り、そこから死と暴力の問題を直視し、これを詩的な文章に収めた作家と評価される。他にも光州民主化運動の痛みを込めた「少年が来る」をはじめ、「麗水の愛」「私の女の果実」「その冷たい手」「風が吹いて行く」などがある。
スウェーデン・アカデミーは「ハン・ガン氏に電話で受賞の知らせを伝えた。彼は息子と一緒に夕食をとるなど、いつもと同じような一日を過ごしていた」と伝えた。
ハン・ガンさんは女性作家としては史上18番目のノーベル文学賞受賞者でもある。受賞者には賞金1100万クローナ(約1億5700万円)とメダル、証書が授与される。授賞式はノーベルの命日である12月10日に行われる。
ラオスを訪問中の尹錫悦大統領はこの日、フェイスブックに「大韓民国文学史上偉大な業績であり、国民が喜ぶ国家的慶事」と祝福のメッセージを掲載した。
ソウル新聞
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【アジアの女性として初めてノーベル文学賞受賞】ハン・ガン代表作『すべての、白いものたちの』、日本国内で海外文学としては異例の累計11万部突破!多数の書店でランキング1位を記録!!
PR TIMES / 2024年11月18日 10時15分
-
〈高橋源一郎氏が絶賛〉中原中也賞、H氏賞、萩原朔太郎賞を受賞した最注目の詩人・岡本啓による第4詩集『ノックがあった』が、11月22日発売!
PR TIMES / 2024年11月15日 11時15分
-
韓国人作家にノーベル文学賞 作品の翻訳家が語る"韓国文学"の魅力 「お薦め本」リスト付き
RKB毎日放送 / 2024年11月5日 18時16分
-
芥川賞作家・藤野可織さんの公開インタビュー「怖いものは美しい」 神戸市の甲南大学で11月22日に開催
OVO [オーヴォ] / 2024年11月1日 11時15分
-
ハン・ガンさんノーベル文学賞受賞で今最も勢いづく韓国文学 日本で唯一、韓国の本の祭り「K-BOOKフェスティバル2024 in Japan」開催迫る!
@Press / 2024年10月29日 15時30分
ランキング
-
1知っておくと便利「つらい咳」を止めるツボと食材 漢方に詳しい薬剤師が紹介する咳止め漢方3種
東洋経済オンライン / 2024年11月27日 12時30分
-
2密室のコックピットで!? 戦闘機パイロット襲った「大トラブル」いまだ完全解決できない切実な課題とは
乗りものニュース / 2024年11月27日 7時42分
-
3斎藤元彦知事“火に油”の言い逃れ…知事選でのPR会社「400人分の仕事はボランティア」の怪しさ不自然さ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月27日 10時46分
-
4全国で販売「カシューナッツ」に“鎮痛剤”混入…… 「深くお詫び」 3万5000袋回収、企業が謝罪
ねとらぼ / 2024年11月27日 8時0分
-
5とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください