1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

松本抜きでも「水曜日のダウンタウン」が強い理由 パワーダウンせずに世間の話題にのぼり続けている

東洋経済オンライン / 2024年10月12日 15時0分

番組のコンセプトは「説を検証する」というシンプルなものだ。プレゼンターとしてスタジオに現れた芸人が、1つの仮説をプレゼンする。そして、その検証の過程がVTRとして流される。最後にスタジオにいるパネラー陣がそれについてコメントをする。

この番組の面白さの秘密は、「説」自体の面白さと、それを検証する過程の面白さに分けられる。説のフレーズを聞いただけで笑ってしまうようなものもあれば、純粋に結果が気になるようなものもある。「説」という何にでも対応可能な受け皿の広いフォーマットを用意することで、さまざまなテイストの企画を試すことができる。

この番組の特徴は、説の立証をある程度まで厳密にやっていくことだ。出演するタレントにヤラセっぽい挙動があれば、そこを放置せず、むしろ積極的に取り上げて指摘していくことで、そのやり取り自体を面白いものとして見せたりする。そのあたりの臨機応変さと誠実さが、この番組の人気の秘密である。

説によっては、検証がうまくいかなかったり、はっきりした結論が出なかったりすることもある。そういうときにも、結果そのものを強引に変えてしまったりはせずに、見せ方を工夫することで、何とかオチをつけようとする。

通常であれば、ほとんどのバラエティ番組において、企画はあらかじめ着地点を定めておいてから走り出すものだ。だが、『水曜日のダウンタウン』ではあえてそれを行わない。

もちろん、VTRを作るための下準備や後処理はきっちりやるのだが、現場では起こったことをなるべくそのまま撮ろうとする。そこで生じたことをそのまま捉えて、どう面白くするかは後処理のときにやればいい、という考え方だ。この徹底した割り切りが、この番組独特のカラーになっている。

また、この番組では一般的な倫理観や常識の限界に迫るような、チャレンジングな試みもたびたび行われている。ときにはそれが世間で問題視されたり、批判の対象となることもある。

しかし、番組側はその挑戦的な姿勢を崩すことはない。すでに番組開始から10年を超える長寿番組になっているが、特定の「定番企画」を何度も繰り返し行ったりして守りに入るようなことはなく、新しい企画をどんどん作っている。

番組の芯のクオリティが高い

この番組は、ダウンタウンの冠レギュラー番組ではあるが、ダウンタウンや松本そのものの面白さをメインコンテンツにしていない。番組側が面白いVTRを作っていて、松本はそれを見てコメントをする役割に徹していた。番組の軸を松本が握っていなかったからこそ、彼が抜けてもパワーダウンすることがなかったのだ。

もちろん、この番組であっても、松本が抜けたこと自体は痛手ではある。VTRを見た後の松本の短くて鋭いコメントの切れ味は抜群だったし、スタジオに彼がいることが出演する芸人やタレントのモチベーションにつながっていた面もある。ただ、それでも何とか持ちこたえているのは、番組の芯の部分のクオリティが高いままだからだ。

『水曜日のダウンタウン』は現代バラエティの最高傑作の一つである。2人の船頭のうち1人を失った今でも、その輝きは失われていない。

ラリー遠田:作家・ライター、お笑い評論家

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください