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低年収では恋愛も結婚も「無理ゲー」な悲しい実態 婚姻数が増えなければ出生数は増えない

東洋経済オンライン / 2024年10月12日 10時30分

男性の場合は、下位3割層だけではなく、中間4割層ですら、3.68人に到達していないことになります。これが、20代中間層の婚姻数が減っている要因でもあります。結婚以前に、恋愛のステージにすら立てていないわけです。

そもそも3.68人の恋愛人数と婚姻数は関係ないと思うでしょうか?
恋愛人数別に、20代未婚男女の結婚前向き率が各々3つの年収階層でどれくらい変化するのかを示したのが以下のグラフです。

男女とも中間層を見ていただければわかる通り、恋愛人数4人あたりで結婚前向き度は最高値に達します。ここで決断した人たちが結婚していくのでしょう。3.68人と結婚とはやはり密接に関係するものと思います。

上位層のモテ無双が中間層の結婚を阻害

しかし、それよりも興味を引くのは、男性の上位層と下位層という2極が「恋愛人数が増えるほど結婚意欲が下がる」という同じような軌跡をたどることです。

下位層は恋愛人数が2人を超えると結婚前向き度が下がります。下位層は恋愛を重ねても、それが低年収ゆえに結婚に結び付かないと学習し、結婚への意欲を失うようにも見えます。一方、上位層は、自己のハイスペ具合により、次々と恋愛相手をとっかえひっかえできることを学習し、急いで結婚する必要性を失うのかもしれません。

しかし、この割を食うのは、中間層の結婚に前向きな男性たちです。上位層は最終的には40歳くらいまでには結婚していきますが、それまでは結婚する気もないのに、恋愛相手として勝者総取りをしていくために、中間層の選ばれない可能性が高まるからです。

金を稼げないと結婚はできないが、金を稼ぐとモテるがゆえに20代での結婚はしなくなる。その上位層のモテ無双が図らずも中間層の結婚を阻害することになる。何という皮肉でしょう。いずれにせよ、男性にとっていかに「お金」が結婚に影響を及ぼすかを示すものです。

昭和のように、お見合いや職場での結婚のお膳立てなき今、恋愛相手を自力で見つけ出さなければならないのですが、恋愛するのにも経済力が必要になり、出会いの場においても、男性は特に年収でスクリーニングされます。手取りが増えない状況にもかかわらず、そのスクリーニングされる最低年収条件はどんどん上昇し、もはや無理ゲーと諦める人も多いことでしょう。

第1子が生まれなければ第2子も第3子もない

当連載でも、子育て支援一辺倒の少子化対策はまったく出生増には役に立たないという話を繰り返しお伝えしていますが、誤解を怖れずに言うなら、児童手当がなくても子どもを産み育てられる上位層にだけ支援が届けられ、「金がないから結婚できない」という中間層の若者をますます諦婚へと導いているようなものだからです。

婚姻数が増えなければ出生数は増えません。第1子が生まれなければ第2子も第3子もありません。20代の若者が20代のうちに結婚できると信じられる経済環境にならない限り、それは晩婚化などならずに、ボリューム層の中間層4割+下位層3割の計7割の若者が結果的に生涯非婚という結果になるだけです。

生まれた子どもたちを支援することは必要ですし、それは否定しません。が、今本当に目を向けるべきなのは、将来その子どもたちを生み出すはずの「結婚願望のある」中間層20代の若者ではないでしょうか?

金がなくてもなんとかなるという「お気持ち論」など無用です。「お気持ち」では彼らは動けません。ここを見て見ぬふりを続ければ、必ず深刻な非婚社会が到来するでしょう。

荒川 和久:独身研究家、コラムニスト

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