「自衛隊員の手榴弾事故」現状の対策は不十分な訳 旧式の危険な手榴弾が訓練でも使用されている
東洋経済オンライン / 2024年10月16日 8時0分
近年自衛官が殉職する痛ましい事故が多発している。自衛隊の任務は過酷であり、どんなに気をつけても訓練で一定の確率で事故が起こるのは不可避ではある。しかしながら、適切に対策を取れば多くの事故が未然に防げるもの事実である。だが自衛隊が殉職事故を真摯に反省し、対策を取っているようには思えない。多くの場合、直接的な原因には言及されるが、もっと川上の根源的な問題は放置されているように思える。
本年5月に陸上自衛隊の北富士演習場における第1普通科連隊の手榴弾の投擲訓練で、手榴弾が爆発した際、隊員が手順通りに弾を投げているか確認する係だった男性隊員(2曹)の首に破片が当たり、死亡した。7月に出た報告書では2曹が手榴弾の破片が飛び散る際の軌道や防護の体勢を正しく認識しておらず、指揮官も指導していなかったことが原因と結論づけた。だが述べられている対策ではさらなる事故が起こる可能性がある。
陸自の報告書に記載された原因
7月に公表された陸自の報告書には以下の通りの原因が書かれている。
原因①
投てき後の「位置」と「姿勢」によっては、曲線の軌道により飛散した破片に接触する危険性があったが、訓練参加隊員にはその認識がなく、加えて、投てき壕の前壁に依託(投てき壕の前壁に身体をもたれさせ、かつ、前壁の高さよりも低く姿勢をとること。いたく)して伏せる姿勢をとるとの認識もなかった。
原因②
第1普通科連隊長以下各級指揮官等は、原因①の状況を認識していないため、「事前の教育及び予行」並びに「射撃実施間の指導」を十分に実施しておらず、それぞれの職責を果たしていなかった。
そして以下の対策が示されている。
再発防止策①
全ての陸上自衛官が、投てき壕の前壁に依託して伏せる姿勢の重要性について、統一した認識を持つよう教範を改正する。
再発防止策②
投てき訓練に携わる全ての各級指揮官等が、再発防止策①の教範の改正に基づき、訓練の「事前の教育及び予行」及び「射撃実施間の指導」を確実に実施するよう徹底する。また、一連の投てき訓練の動画を作成し、訓練実施前に必ず視聴させる。
だが報告書には触れていない事実が存在する。掩体壕に隠れても破片は放物線を描いて飛んでくるので被弾する。このため他国の軍隊では手榴弾の投擲訓練では掩体壕に隠れるだけではなく、退避壕の中でもヘルメットの頭頂部を手榴弾の爆発する方向に向けることによって頭部、顔面、頸部を保護する。
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