欧州連合が「中国製EV」に対する追加関税を可決 11月から適用、中国との代替案の交渉にも含み
東洋経済オンライン / 2024年10月16日 19時0分
欧州連合(EU)の加盟27カ国は10月4日、中国製EV(電気自動車)に追加関税を課すという欧州委員会(訳注:EUの政策執行機関)の提案について投票を実施。そして同日、欧州委は「提案は必要な支持を得て可決された」との声明を発表した。
【写真】中国のEV大手のBYDがハンガリーで現地生産する電動バス(同社ウェブサイトより)
この声明は、投票の具体的な中身について明らかにしていない。しかし複数のメディアの報道によれば、追加関税に賛成票を投じたのは10カ国、反対票は5カ国で、残り12カ国は投票を棄権した。
なおEUの規定によれば、議案の可決・否決は加盟国の投票数だけでは決まらない。27カ国のうち15カ国以上が反対し、それらの国々の人口がEUの総人口の65%以上を占めた場合、議案は否決される。
自主規制案に厳しい条件
欧州委は中国製EVを対象にした反補助金調査に2023年10月に着手し、すでに2024年7月から最高38.1%の追加関税を暫定適用している。
今回の投票結果を受け、欧州委は10月30日までに反補助金調査の最終結論および追加関税の実施規則を公表する。そのうえで11月から正式適用を開始する予定だ。
その一方、欧州委は声明の中で「EUと中国は(自主規制などの)代替案を模索する努力を続けている」とし、交渉による妥協にも含みを持たせた。
ただし、代替案は欧州委が指摘した不当な補助金を相殺するのに十分なものであると同時に、強制力があり検証可能でなければならないと厳しい条件をつけている。
EUが中国製EVへの追加関税を可決したことに対し、中国商務省は「不公平で(国際的な)規則に沿わない、理不尽な保護主義的ふるまいであり、中国は断固反対する」という報道官談話を発表した。
この談話のなかで商務省は、中国側は対話と交渉を通じて(EU側との)意見の相違に適切に対処するため、一貫して最大限の誠意を示してきたと強調した。
中国とEUは2024年6月末から10回を超える局長級協議と2回の次官級協議を重ね、9月19日には中国の王文涛・商務相が欧州委のヴァルディス・ドムブロウスキス上級副委員長(貿易担当)と会談。貿易摩擦のエスカレートを避けるための交渉を進めることに合意していた。
最適解は現地生産
しかし今日まで、EU側は中国側が示した輸出価格と輸出数量の自主規制案を拒否し続けているのが現実だ。
「中国の自動車メーカーがヨーロッパ市場に長期的に根付くことを望むならば、(追加関税に反対するよりも)EU域内での工場建設を検討すべきだ」。ある業界関係者は匿名を条件にそう本音を語った。
一部の中国メーカーは、追加関税を回避するためにEVを第三国で生産し、EUに輸出することを検討していた。しかしEUの法規に詳しいある専門家は、そのような対策はリスクを伴うと指摘し、次のようにコメントした。
「追加関税の正式適用が始まった後、欧州委は課税逃れの疑いを調査する権限を持つ。中国メーカーにとって最善の選択は、やはりEU域内で自動車を生産することだ」
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は10月4日
財新 Biz&Tech
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