三井不動産が「ネット通販」に意外と本気のワケ 「ららぽーと」など商業施設の開発が本業だが
東洋経済オンライン / 2024年10月16日 8時35分
他のリアル店舗にも良い効果
また、館内でのリアル店舗への送客にも成功しています。
例えば、ららぽーとクローゼットの無料サービス「PLUS MIRROR」では、ディスプレイを用いた診断で、顔写真を撮影して、AIによる顔タイプ診断やカラー診断のほか、館内のおすすめショップをレコメンドしてくれます。ららぽーとを訪れた人は、「PLUS MIRROR」で診断した後に、おすすめされたショップを巡るなど、新しい流れを生み出しました。
このように、テナント企業に選ばれる魅力的なサービスを展開しているという点において、三井不動産側から見るとららぽーとクローゼットはBtoCビジネスでありながらBtoBビジネスでもあるのです。
しかし、実のところ、その場で商品を購入しないショールーミングという手法は、成功させるのが難しいと言われています。なぜ成功事例の少ないショールーミングにおいて、ららぽーとクローゼットがうまくいったのでしょうか。その成功要因を見ていきましょう。
① 広いスペースの確保
大きな要素としては、十分なスペースを確保できたことにあります。一般的な店舗運営では、広いスペースであればあるほど家賃が高くなり、高額な毎月の固定費(家賃)は経営を圧迫してしまいます。
しかし、ららぽーとクローゼットは自社の商業施設での運営であるため、家賃に関しては柔軟な対応が可能です。そのため、訪れた人がゆったりとした気持ちで体験できる場所を確保できました。
② 商業施設と一体化した戦略的展開
自社での運営であるため、ららぽーとクローゼットの店舗開発を全体の施設(=ららぽーと)コンセプトとシームレスに統合することに成功しています。これにより、テナントや他のサービスとの連携がスムーズに行われ、ららぽーと全体での総合的な顧客体験が底上げされています。
③ 豊富な開発ノウハウによる高い運営力
BtoCの消費者の動向をしっかり調査分析したところは大きな成功要因でしょう。テナント企業以上に、テナント企業の消費者のニーズを理解しないと運営はうまくいきません。消費者が何を考え、何を望んでいるのか、徹底的な顧客中心主義でサービスが展開されたのが成功の背景にあります。
④ 現場を熟知したDX担当者
顧客中心主義で展開できた背景には、担当者が現場を熟知していたことも見過ごせない要因です。
この事業は三井不動産の商業施設・スポーツ・エンターテイメント本部が担当しており、DX本部も兼務する担当者は元々アパレルで店長を経験した人材です。テナント側の意向や希望を理解しているのはもちろんのこと、最前線で顧客に接した経験があるのは非常に大きな強みです。
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