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「核戦争を止めている」ことこそ被団協の最大功績 ノーベル平和賞受賞、若い世代にどう継承するか

東洋経済オンライン / 2024年10月17日 8時0分

だが、80年に及ぶ核戦争発生を防いできた反核行動の主役である被団協に見られるように、核被害者たちの年齢は80歳を優に過ぎた。これからは若い世代がいかに運動を継承し、発展させていけるかが最大の課題となる。

個人個人の反核決意がカギ

筆者は1990年代末から2000年代初めまでの約10年間、広島の大学で教鞭をとりながら原爆問題に関わってきた。その経験から言えることは、大学生を含む多くの若者はヒロシマ・ナガサキにほとんど関心を示さないことだ。

広島では小学校から大学まで、原爆被害の悲惨な状況を原爆ドームや原爆資料館などへの参観で繰り返し学んでいる。ヒロシマの記憶を叩き込まれているはずだ。だが参観した生徒や学生の中からは、「もう飽きた」といった声が聞こえることも再三である。

一方、被害の記憶継承に熱心な若者たちも少なくない。被爆者第3世代の彼らが今、被爆者第1世代と第2世代から運動を引き継ごうとしている。

10月11日夕、広島市役所での記者会見に臨む広島県被団協の箕牧智・代表委員に寄り添う高校生の平和大使たち。平和記念公園で通訳ガイドに勤しむ大学生など若いボランティア。これからは彼らを中心に「原爆許すまじ」の行動が世界に広がっていくだろう。

国際社会の反核、反戦運動は環境破壊阻止の各種市民行動と連携していくことが期待される。16歳の少女が「国連気候行動サミット」で堂々のスピーチを行い、世界の注目を集めた。スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんだ。

彼女は現在21歳。2024年5月、同国南部のマルメでパレスチナ・ガザ区侵攻のイスラエルに対する1万人以上の抗議デモ行進が行われ、グレタさんも参加した。グレタさんらの活動とは「持続可能な開発目標」(SDG)への取り組みにもつながっている。

被団協の授賞理由文は「アルフレッド・ノーベルのビジョンの核心は、献身的な個人が変化をもたらすことができるという信念である」と説いている。反核も環境保護も、究極は個人個人が地球と人類を救うおうと決意するところから始まるのだ。

試される石破首相の決意と外交力量

その意味で、石破茂首相には、核廃絶前進への日本国民の決意を国際社会で有効に反映させる個人としての外交力量が試される。日米同盟の堅持は自民党だけでなく立憲民主党ほか多くの野党の政策でもある。国民の大半もこれを支持している。

この現実に立脚して石破氏は日米同盟を堅持しつつも中国、ロシア、北朝鮮との間にアメリカとは別の外交空間を開き、日本の国益とこれら3国の国益との共通基盤を固めていくべきだろう。

党内保守派の反目もあり、容易な作業ではないが、説得力ある外交を推進することで初めて日本はノーベル平和賞にふさわしい国民国家の地位を確立できるだろう。

菱木 一美:広島修道大学名誉教授

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