大統領選を左右するアメリカ「労働組合の現在地」 組織率が低下するも、その影響力は侮れない
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 16時0分
また、どのような分野を中心に組織している労働組合なのかによっても多少の違いがあります。教員や公共部門などはリベラル色が強いですが、運輸労働組合や法執行などは相対的に保守寄りです。
共和党は、労働組合内の保守的で一般的な労働者が、組合を切り崩す足掛かりになるということで、組合と労働者は違うということを強くアピールします。
「労働組合(指導部)は労働者の敵である」、「労働組合は組合員の言論の自由を侵害している」、「労働組合に強制されない労働者の自由がある」、「労働組合が組合費の政治的流用をしている」などといって組合からの離反を策します。
このように「組合は民主党の特殊利益団体になっているけれども、一般労働者の味方は共和党です」とアピールして、共和党の支持を訴えます。
労働組合が献金している政党は民主党ですが、一般的な組合員を見ると、すべてがリベラルではありません。
社会文化の争点である移民やLGBTQや銃規制などにおいて、共和党の主張に引っ張られる労働者も一定数存在するのです。民主党の政策に違和感や疎外感を持つ組合員はいます。
環境問題で利害が一致した労働組合と環境保護団体
――以前はそれほど労働組合が環境保護団体と結びついていなかったようですが、現在はとても密に感じます。どうしてでしょうか?
松井氏 ひとつは労働組合が左派系の団体と親和性を高めたからです。労働組合の指導者や構成者が白人男性中心だったころは、文化的にもやや保守的だった人が多かったのですが、労働組合員の重心がサービス業に変わっていくなかで、その意識も変わってきました。
また、グローバル化のなか、かつては日本との貿易摩擦が問題でしたが、途上国との貿易の話になっていくと、途上国の環境基準や労働基準の低さが、アメリカの労働者にとって得にはならないと意識されるようになりました。アメリカの環境基準や労働基準にあわない仕事が途上国に流れてしまうからです。
このようなことがあって、途上国の環境基準や労働基準を引き上げたいという環境団体や人権団体の利害と労働組合の利害が一致したのです。
――トランプは環境保護団体が石炭の火力発電に反対していることに対して、もっと石炭を掘れ「ドリルドリルドリル」ということで、石炭産業で働く労働者を味方につけたという報道がありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
松井氏 国内の環境問題については、潜在的に労働組合と環境保護団体との対立関係はあります。石炭産業など化石燃料を扱う産業もそうですが、CO₂を排出する産業をなくすことは、そこで働く労働者の仕事を奪うことになります。トランプは、そこをついて、環境保護団体と労働者を離反させようとしています。
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