ガストとサイゼ、「ファミレス衰退」での戦略の違い ちょい飲みに適応と、ファストカジュアルへの移行
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 8時30分
「小皿商品」については、グランドメニューで提供されているメニューのハーフサイズやおつまみを含めた20種類以上の料理がメニューに登場。
アルコールの価格についていえば、すでに紹介した通りだが、生ビール(中)が税込500〜550円、角ハイボールが税込300〜350円、グラスワイン赤白が税込150〜200円となる。
時代の後押しを受ける「ちょい飲み」需要
2023年に帝国データバンクが2019〜2023年の「酒場DI」を発表した。これは、酒類業界(製造・卸売・小売り・飲食)に絞った景気DI(帝国データバンクオリジナルの景気指標)で、簡単にいえば、「酒にまつわる場所の景気ってどんな感じ?」ということがわかるデータだ。これによれば、2023年に入って酒場DIはコロナ禍前を超える水準に回復したという。
ガストも、2023年から今見てきたようなメニューの拡充やアルコールメニューの増加を積極的に行い、その潮流にうまく乗ることができたといえるかもしれない。
ただ、その回復はコロナ禍以前にそのまま戻ったわけではない。特にコロナ禍を経て会社での飲み会が少なくなったことなどを受けて居酒屋の利用は減少。その代わり、居酒屋ほどがっつりではなくちょっとだけ飲んで帰る「ちょい飲み」需要が増えたのではないか、という声も聞かれる(中井彰人「日高屋が値上げしても熱く支持される納得の理由 ちょい飲み客のニーズをつかんだ日高屋の強み」)。
そんなわけで、ガストなどをはじめとするチェーンレストランの「ちょい飲み」は時代の流れにも後押しされる結果となったのだ。
実際、アルコール値下げとの相乗効果もあったのだろう、こうした取り組みによって、ガストでのサイド皿数の前年対比は27%増になったという(2023年度通期決算資料より)。
こうした状況も踏まえると、ガストの「ちょい飲み」戦略は一定の成功を収めているといえそうだ。
ガストがメニューを拡充している一方、「ちょい飲み」の帝王ともいえるサイゼリヤは、近年メニュー数を減らしている。これも、また別の側面からのファミレスのポジショニングの再構築の事例だ。
それによって、メニューの提供コストが下がり、物価高の現在でもこれまでの値段でメニューが提供できるのだ。ミラノ風ドリアが今でも税込300円で食べることができるのは、ほとんど奇跡に近いといっていい。
サイゼリヤは「ファストフード」と「ファミレス」の間にある「ファストカジュアル」という業態を目指している。「ファストフード」のように、低価格でメニューを食べられる工夫の一つとして、こうした戦略を採っているのだ。
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