ソフトバンク系「PayPayアセット」突然の"幕引き" 運用会社が事業を終了すると、投信はこうなる
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 7時30分
対してPayPayアセットマネジメントは、業務改善命令が発出されたわけでもないし、行政処分が行われたわけでもない。業績の悪化と、その改善が見通せないことが、事業継続をあきらめさせたのである。
この違いは無視できない。なぜなら現在、個人向けに投資信託を設定・運用している運用会社の中には、運用資金が集まらずに苦労していると思われるところが、少なからずあるからだ。PayPayアセットマネジメントが業績悪化を理由に事業から撤退するのを見て、「うちもそうしよう」と考える同業他社が出てこないとも限らない。これから投資信託を購入するときは、ファンドの運用成績だけでなく、それを運用している運用会社の業績もチェックする必要があるだろう。
もちろん、機関投資家や金融法人から多額の資金の運用を委託されているような運用会社なら、個人向け投資信託の運用資金が小さくても経営を継続できる。が、個人向け投資信託の運用しか行っておらず、その資金も小さい運用会社は、経営面で厳しい状況に追い込まれるリスクも残る。いくら長期投資を標榜する運用会社でも、自らの経営の持続性が担保されなければ、それは絵に描いた餅でしかない。
こと近年においては、信託報酬率の引き下げ競争が激しく、かつてのように運用会社が年1.5%もの信託報酬を取ることはできない。インデックスファンドの信託報酬に至っては、年0.1%を切るものが大半で、アクティブファンドですら年1%未満なのだ。
例えば、運用会社が得る信託報酬率が年0.5%で、運用資産が50億円だとすると、年間の売上高はわずか2500万円。従業員数にもよるものの、オフィスの賃借料や各種システムにかかる費用などを考慮すると、完全な赤字だろう。
このような運用会社が設定・運用するファンドを買ってはいけない。長期投資をするつもりで買ったとしても、赤字続きの運用会社は、経営の持続性に難があるし、そもそも黒字化できないような運用会社が、投資先企業を選別して投資するなど”噴飯もの”だ。
運用会社の財務情報も忘れずに見よ
実際、個人向けに投資信託を設定・運用している運用会社は、自社のホームページで財務情報を開示している。「正会員の財務状況等に関する届出書」がそれだ。また運用会社の純資産総額に関しては、「投信資料館」というサイトが定期的に公表している。投資信託を保有している人は一度、チェックしておくとよい。
今はまさに総選挙の真っ最中だが、石破茂新政権は前政権からの「資産運用立国」の方針を引き継いだ。新内閣発足の矢先、資産運用会社が事業終了を決めるとなると、政府方針の達成もいささか危うくなってくる。
鈴木 雅光:JOYnt 代表、金融ジャーナリスト
大野 和幸:東洋経済 記者
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
新NISA2年目おすすめ投資信託、「S&P500で十分」な人が“トランプ・リスク”をリカバリーするには?
Finasee / 2025年1月3日 12時0分
-
「eMAXIS Slim」の爆売れと新NISA成功は印象的だが…“ある運用会社の事業終了”も重要なワケ【2024年投信振り返り】
Finasee / 2024年12月27日 12時0分
-
「S&P500」に代わって浮上しそうなアクティブファンドとは? インデックスに高まる警戒感
Finasee / 2024年12月19日 7時30分
-
【投資信託】運用会社が業績悪化を理由に事業終了…未上場企業の業績を把握する方法はある?
MONEYPLUS / 2024年12月18日 7時30分
-
投資のプロが注目! 運用報酬の一部が払い戻されるユニークなファンドとは?=11月新規設定ファンド
Finasee / 2024年12月17日 7時0分
ランキング
-
1「日本一土地代が高い」新宿・歌舞伎町のバッティングセンターはなぜ潰れないのか? 店が語った驚異の「1日の来場者数」と営業理念
NEWSポストセブン / 2025年1月4日 16時15分
-
2豊洲市場で初競り、一番マグロは歴代2位の2億700万円「鮮度がずば抜け」
読売新聞 / 2025年1月5日 7時53分
-
3IBM、技術巡る訴訟和解 ラピダス、事業懸念解消
共同通信 / 2025年1月4日 22時33分
-
4USスチール買収阻止、アメリカ政府への訴訟以外に打開策見当たらず
読売新聞 / 2025年1月4日 21時3分
-
5トヨタ・ホンダ・日産、アメリカでHVやSUV好調…トランプ政権下で需要の変化加速か
読売新聞 / 2025年1月4日 18時49分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください