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「50代独身、団地暮らし」に猛烈に惹かれるワケ 「団地のふたり」が織りなす"なんかいい暮らし"

東洋経済オンライン / 2024年10月20日 11時0分

なっちゃんは昔は売れっ子だったがいまは仕事が減り、ノエチは子どものときは優秀だったが、大学の出世争いから外れ、いまは非常勤講師をしている。離婚も経験している。そして、「おばさん」であることも自覚している。

美魔女でもなく、50を過ぎてもバリバリ活躍しているわけでもない。でも、日々、のんびり楽しくやっている。フリマアプリで古道具を売ったお金でちょっと美味しいものを食べたり。

ふたりが楽しそうにしているのを見ていると、あくせくしなくていいのではないかと思えてくる。リノベもしてもいいししなくてもいいのではないかとも。フリマをやろうかとも(ドラマに影響されすぎ)。

彼女たちの親世代(団地第1世代)もまだ現役で元気で暮らしていて、ノエチとなっちゃんは網戸の張り替えを手伝うなど、高齢者たちともうまくやっている。住人の入れ替え期でもあって、新たな住人たちも入ってくる。

シングルファーザーの父娘や、フラワーアレンジメントを生業としている同性愛者もいる。一度は引っ越したけれど、認知症になった母とふたりでもう一度団地で暮らしはじめた同級生(仲村トオル)もいて。

そういったさまざまな事情を抱えた人たちと、ふたりはほどよい距離感で共生していく。これもまた極めて現代的で、家族だけが拠り所ではない。近隣の人たちとつながりあうことを行いやすいのが団地というコミュニティである。

マンションよりも、ちょっとだけ家と家とが近く、かといって、必ず濃密に付き合わないといけない縛りがあるわけでもない。

ノエチは家に帰れば母親がご飯を作ってくれるけれど、なっちゃんとご飯を食べることのほうが多い。家も家族も持ちながら、仕事の帰りに立ち寄る場所がもうひとつあることで、気分転換できる。

ノエチも、家でひとり仕事していると停滞を感じるときがあるだろうけれど、食事だけは誰かといっしょにすることで回避できるだろう。

87歳まであと30年以上あるという現実

だが本当はふたりだってここでの生活に100パー満足しているわけではないのである。50代、更年期もくるし、若者に「おばさん」と言われることも心地よいわけではない。自分の日常が決して冴えているわけではないことは自覚している。

そこを深掘りしてもいいことはないから、遠くまで行かず浅瀬のところでちゃぷちゃぷと足を浸しているような日々を過ごすふたりを小説では、なっちゃんが「はぐれ者」と呼ぶ。

はぐれ者なりのゆるく心地よい日々。とてもうまくやっているようだが、それは互いにほどよく我慢することで成り立っている。長い付き合いの中で、ふたりの間では、先に弱ったほうをもう一方が助けるという暗黙のルールができていた。

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