大コケ映画「ジョーカー2」を責めてはいけない訳 今年最大の注目作があえてセオリー無視で挑んだこと
東洋経済オンライン / 2024年10月20日 12時0分
スタジオはそれを理解し、これまでの実績も踏まえて、フィリップス監督の好きなようにやらせてあげようと決めた。そして、そのビジョンを追求するために必要だという予算を出したのである。ジョーカーとミュージカルを融合するというのはユニークなコンセプトだし、またとない芸術的な映画になるかもとの期待もあっただろう。
筆者も、同じ好奇心と期待を持っていた。残念ながら、結果はそうならなかった。今になってから、「コアな観客を無視するなんて、スタジオは何を考えていたのか」「こんなものがうまくいかないのは当たり前」と批判するのは簡単だ。
しかし、1作目と同じことを繰り返す続編を作ったとしたら、これまた批判されただろう。それに、観客の求めるものばかりを重視していたら、良い意味で予想を裏切るものは生まれないのだ。
結局のところ、映画に関しては、何が当たるかなんて誰にもわからないのである。昨年夏、ワーナーは、グレタ・ガーウィグに完全な自由をあげ、『バービー』を大ヒットさせた。おもちゃの人形にフェミニズムをからめた映画が14億ドルの爆発的ヒットになり、アカデミー賞にも候補入りすると、誰が想像しただろうか。保守派の男性たちからバッシングがあったことを見てもわかるように、あの映画にはリスクもあったのだ。
リスクを取って挑戦することの意義
ユニバーサルも、原爆を作った物理学者についての3時間の伝記映画『オッペンハイマー』を、10億ドル近いヒットに持ち込み、アカデミー賞作品賞まで獲得した。
ワーナーを離れたノーランを呼び込みたかったし、実績がある監督だから、大人の映画は大きく当たらないと言われる中でもゴーサインを出したのだろうが(ユニバーサルは、普段のノーラン映画の予算よりは金額を絞った)、内心は不安だらけだったはずだ。
そんな例が続いたが、それはたまたま。映画作りは所詮ギャンブルで、いつもうまくいくとは限らないというシンプルなことを、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は思い出させてくれたにすぎない。メジャースタジオには、これを教訓とはせず、フィルムメーカーと新しいことに挑んでいってくれることを望みたい。
ただ、1億9000万ドルと提案されたら、「1億5000万ドルではだめか」くらいは、聞いていいのではないかと思うが。
猿渡 由紀:L.A.在住映画ジャーナリスト
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