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子どものことばを育てるのに本当に必要なこと 「ことばのシャワーを浴びせる」のが正解ではない

東洋経済オンライン / 2024年10月21日 8時30分

ここでは「ご飯を食べる」を例として取り上げてみましょう。「ご飯食べるよ」のこちらからの声かけで行動の見通しが持てる子どももいれば、「ご飯食べるよ」という声かけの前に「この状況だとそろそろご飯だろう」と予測をして待つことができる子どももいれば、「ご飯食べるよ」と声がかかって、目の前でご飯の準備ができている様子を見てそこで「あ、いまからご飯を食べるんだ」と気づく子どももいます。

この子どもの反応を観察すれば、どの段階で行動の予測ができているか、あたりをつけることができますね。イベントに対するアプローチから「状況やその変化に関する理解」を見ているわけです。

次に、イレギュラーなイベントについて。例えば「車に乗って外にお買い物に行くよ」という状況に、どの段階で対応ができるか、も理解力を反映します。

毎日あるイベントに比べて急に行動が切り替わるので予測はこちらのほうが難しいです。「いまから車に乗ってお買い物に行くよ」という声かけだけで理解ができて反応ができる子どももいれば、「いまから車に乗ってお買い物に行くよ」という声かけに合わせて、車の鍵を子どもに見せて、かつ玄関に意識を向けさせることではじめて「あ、いまからお外に出るんだ」と理解ができる子どももいます。

大人は「子どもにとってわかりやすい人」であるべき

この段階で子どものことばの理解を育てていく(状況の理解を育てていく)ためには、大人が「子どもにとってわかりやすい人であること」が望まれます。

これは決して難しいことではありません。予告もなく急に子どもの活動を制止したり(もちろん生命に関わるような事態なら話は別です)、相手の予測を裏切るような急な活動や行動の切り替えを強いたりするような場面をできる限り減らしていけばよいのです。子どもから見て「この人は何を考えているのかわかりにくい……」といった状況を少なくしましょう。

もちろんこれは子どもに好き勝手させるわけではありません。少し意識するだけでいいんです。例えば保護者と子どもで外出をする際に、声かけをしながらいきなり手を引っ張る人であるのか、まず「外に出るよ」と声かけをしたうえで、本人に(外出のための)靴を見せて、玄関を意識させてから子どもと手をつないで外に出ようとする人であるのか。もちろん後者を推奨しています。

ざっくりとまとめると、「唐突な行動を避けて、活動が変わる際にはタメを作って(そのときに)本人がイメージしやすい目で見てわかるものを手がかりとしてその気にさせる」ことが重要です。

その気にさせている間に子どもは頭の中で次の活動をイメージできるようになっていくわけです。この活動や行動の見通しをつけていくことは、単に状況の理解を促進するだけではなくコミュニケーション面にも大きな影響を与えます。

子どもはわかりやすく次の活動や行動の手がかりを与える大人(の行動)に対して、しっかりと注意を向けるようになります。その注目が視線や表情などの非言語的なコミュニケーション手段の理解を促す土台となるわけです。さらに、その人に対する基本的な信頼関係があるからこそ「(その人の行動を)期待して待つ」といったこともできるようになります。

川﨑 聡大:立命館大学教授

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