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「鉄塔爆買い」のベンチャーが5年で市場を去る真因 米国投資会社がTOB、抱えていた構造的ジレンマ

東洋経済オンライン / 2024年10月21日 7時20分

2019年12月に上場したJTOWER。上場直後は”5G銘柄”としても期待を集めた(撮影:ヒダキトモコ)

通信インフラシェアリングのパイオニアはなぜ、5年で市場を去ることを決めたのか――。

【図表で見る】JTOWERの株価推移。今年に入って上場来安値にまで急落していた

10月10日、携帯キャリア向け設備の共用事業を展開するJTOWERの株式に対するTOB(株式公開買い付け)が成立した。アメリカのデジタルインフラ投資会社が8月から開始し、会社側も賛同していた。今後、12月に開かれる臨時株主総会を経て、JTOWERは上場廃止になる見通しだ。

2012年創業のJTOWERは、キャリア各社が従来、自前で整備・保有してきた通信設備を共用するビジネスを国内で先駆的に展開し、2019年12月に東証マザーズ(現グロース)市場に上場した。すでにインフラシェアが普及していたアメリカやインドのように、日本でも通信設備のコスト削減を課題とするキャリア間で設備共用が進むとの期待もあり、上場時に2620円だった株価は一時、1万3000円を突破した。

非公開化の目的は「資金調達」

しかし、今年に入って株価は上場来安値の1000円台前半まで急落。そして今回のTOB成立により、わずか5年で株式市場から姿を消す見通しとなった。

「機動的な成長資金の調達を安定的に行い、将来の追加の資金需要により機動的に対応することや長期的な観点での先行投資が可能となる」

JTOWERが8月に出したリリースで、TOBに賛同した理由として強調したのは、「資金調達」だった。安定的に資金を必要とした最大の要因は、育成中の「タワー事業」にある。

JTOWERが展開するインフラシェアは、通信鉄塔を利用した屋外向けの「タワー事業」と、商業施設などに設置する通信設備を利用した屋内向けの「IBS(屋内インフラシェアリング・ソリューション)」に大別できる。当初はIBSのみを展開し、上場後に本格的に開始したのが「タワー事業」だった。

社名に「タワー」という言葉が入っているように、創業時からタワー事業の展開を模索したが、当時はキャリアの理解を得ることが容易ではなかったという。

悲願とも言えるタワー事業の本格展開に向けて、JTOWERは2021年から鉄塔の「爆買い」を開始した。

同年7月にNTT西日本からの71基の鉄塔取得を発表したのを皮切りに、2022年3月にNTT東日本から136本、NTTドコモから6002本の取得を決定し、2023年9月には同じくドコモから1552本の追加取得を決めた。移管は順調に進み、2024年3月時点で5759本、2025年3月末までに7297本が完了する見通しだ。

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