中古車販売「ガリバー」と「GS」に金融庁が立入検査 事故車修理の一部で保険金水増し請求などの疑い
東洋経済オンライン / 2024年10月21日 18時30分
「ガリバー」のブランド名で中古車販売事業を展開するIDOM(イドム)と、同業大手のグッドスピード(GS)の2社に、金融庁が立ち入り検査していることが分かった。
【写真】「納車のテイのお客様」を部長がしっかりフォローするよう指示した社内メール
2社をめぐっては、旧ビッグモーター(現ウィーカーズ)による保険金不正請求問題が顕在化して以降、同様の不正が起きていないか、損害保険各社が2023年夏から独自に調査を進めてきた。
同調査では、2社が事故車の修理費用(保険金)を損保各社に水増し請求している疑いが一部の案件で浮上。旧ビッグモーターのような万単位の件数ではないものの、疑義の解消に向けて、2社と損保各社は1年以上にわたって修理作業の内容や請求書面などを改めて精査している。
一方で調査開始から1年以上が経過しているにもかかわらず、進捗は鈍い。金融庁は契約者保護の観点から、より深度のある実態把握に向けて、立ち入り検査に踏み切ったとみられる。
疑義は保険金の不正請求だけではない
IDOMの疑義は、保険金の不正請求だけではない。自動車保険契約の見返りとして、車両の販売価格を割り引くといった保険業法上の違反行為(300条1項5号、特別利益の提供)の疑いも浮上している。同社の関係者によると、実質的な保険料の割引となる違反行為をめぐって、「店舗スタッフ同士のトラブルも起きている」という。金融庁はそうした観点でも検査を進めているとみられる。
グッドスピードは2023年8月に保険金不正請求の疑義が浮上したことで、同月末に社内調査委員会を設置。同年10月には、調査した1664件のうち91件で「不適切疑義案件」があったと発表していた。
ただ調査範囲が限定的だったこともあり、損保各社は追加調査とともに、弁護士など外部の有識者による調査委員会の設置を繰り返し要請していた。
「嘘納車」「納車テイ」などと称して売り上げを先行計上
ところが、その最中に金融庁への公益通報によってグッドスピードには「不正会計」疑惑も持ち上がった。納車前の段階にもかかわらず、販売代金を先行して売り上げに計上するという手口で、当時の取締役をはじめとして組織的な関与が強く疑われる事態に陥ったのだ。
2024年1月に公表した外部調査委員会による報告書によると、同手口は社内で「嘘(うそ)納車」「納車テイ」などと称されており、「車両納品確認書」を偽造していることも判明。売り上げとして先行計上した案件は、2018年9月期以降で合計約6000件、金額にして約150億円にも上っており、2019年の株式上場前後から急速に件数及び金額が増えていたという。
一連の不祥事による販売の落ち込みや決算修正などの影響で、債務超過に転落。その後、ガソリンスタンドなどを運営する宇佐美鉱油がTOB(株式公開買い付け)を実施したことで、宇佐美の完全子会社となり、2024年8月に上場廃止となっている。そうした不正会計による混乱もあり、保険金不正請求の疑義についての同社や損保による調査は思うように進んでいなかった。
金融庁の立ち入り検査について、IDOM、グッドスピードともに「お答えはいたしかねる」としている。
中村 正毅:東洋経済 記者
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