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VC大手「ジャフコ」のセクハラ事件に業界は沈黙 スタートアップ業界「セクハラ横行」報道の中で露呈

東洋経済オンライン / 2024年10月23日 7時40分

待っていたのは給与半減

事件から10カ月ほど経った2020年10月。女性は契約更新に向けて面談を数回行った。

その際、ジャフコ執行役員のM氏から、給与の減額を受け入れるか、退職するかを迫られたという。「今後正直にいうと(あなたを)必要としていませんってこと。っていう前提で言われたときに結局どうしますか、それでも継続したいですか」と告げられたそうだ。

女性は従来の半分、月額50万円で仕事を続ける道を選ぶが、ストレスにより休職。最終的には雇い止めになった。女性側は、「基本的に(会社を)辞めてほしい。残りたいのなら(給与は)半額だという流れだった」(指宿弁護士)と説明する。

一方のジャフコ側は、「女性の業務の進め方や周囲とのコミュニケーションのあり方に起因し、周囲との軋轢がたびたび生じていた」(広報担当)とし、適切に話し合いを進めたとする。面談の際に女性の人格を否定したり、雇用条件に関して一方的に迫ったりしたという認識はないとも説明する。

すでに女性と加害者との間では和解が成立。女性が求めているのは、ジャフコが従業員への安全配慮義務に違反していたことや給与減額などに対する補償だ。

女性側の弁護士は、「ビジネスと人権」の考え方に基づき、ジャフコのファンドに出資する銀行や企業も対応が必要だと呼びかける。また、VCの業界団体である日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)に対して、業界としてセクハラ被害防止のための抜本的対策を取るよう要請している。

ビジネスと人権に詳しい蔵元左近弁護士は、「とくにジャフコと関わりの深い企業は事実関係の確認を行い、ハラスメントを許さないというメッセージを発するべきだ」と指摘する。自社の問題ではないという論法は今の時代通用しない。

ジャフコは同業のANRIと共同で、女性起業家に特化した支援プログラムを始めていた。だがジャフコは「関係者に迷惑をかけるため辞退」した。ANRIに事実関係の確認などを行っているか尋ねたところ、「弊社で起こった事案ではないため回答を控える」とのことだった。

上辺だけで問題に向き合っていない

JVCAにはジャフコも加盟し、被害女性と面談したM氏が要職に就いている。JVCAの広報担当者は、「ジャフコには事実確認を求めている。M氏については完全にジャフコさんマターの話なのでわれわれはいっさい関知していない」と話す。

昨今、女性起業家に対するセクハラの問題が報道されている。

イノベーションに関する教育を行っているアイリーニ・マネジメント・スクールの柏野尊徳氏が今年7月に行った調査では、女性起業家の52.4%が過去1年間にハラスメントを経験。加害者は投資家やベンチャーキャピタリストが44.4%を占めた。

また、過去1年間に受けた被害を周囲や関連機関に相談報告したケースは14.8%で、多くの被害者が泣き寝入りしている状況が浮かび上がる。

業界関係者からは、「女性支援をふだん口にしている人たちがセクハラ問題になると沈黙するのはなぜか。上辺だけで問題に向き合おうとしていない」との批判が聞こえてくる。社会的責任を果たすのか、今問われている。

大塚 隆史:東洋経済 記者

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