QBBベビーチーズ「飛ぶように売れる」棚作りの妙 年間2億本以上!国民的プロセスチーズの"勝因"
東洋経済オンライン / 2024年10月25日 8時35分
QBBのチーズは多種多彩なのが魅力だが、それを売る側のスーパーとしては、棚のスペースが決まっている以上、「なにかを売るには、なにかを排除する」必要が生まれる。
そうなると、「六甲バターさんは、このスペースでいいか」と考え、既存商品のスペースが少なくなることもあり得る。同じ会社の中で、商品同士が売り場を食い合う可能性もあるのだ。いわゆるカニバリゼーションという状態だ。
しかし、六甲バターの場合は、こうして営業部員が地道に売り場を開拓したことで、製品開発部の中に「新しい商品もきっと、配置する場所を獲得してくれる」という気持ちが生まれた。だから、「自社の他の製品の売り場を奪ってしまうのでは」などと心配することなく、新製品の開発をのびのび続けてこられたのだ。
「開発先導型」の社風と、部署の垣根を越えて議論を交わせる関係性から生まれる六甲バターの強さ。実は同社にはもう1つ、根本ともいえる強さの理由がある。「アメーバ経営」だ。
アメーバ経営とは、京セラの創業者で、経営破綻したJALを2年8カ月で再上場に導いたことでも知られる故・稲盛和夫氏が編み出した経営手法である。会社組織をアメーバ細胞に見立てて小さな集団に細分化し、集団ごとに独立採算で運営するのが特徴だ。
社内で売り買いが発生し、その金額をオープンにすることで、「自部門の業務がどれだけ会社の収益、成績につながるか」を明確化し、自部門のみならず、会社の経営内容までが社員に見える化していく。このため、一人ひとりが経営に責任を持ち、経営者の視点、意識を持って働けるようになっていくという仕組みである。
六甲バターがアメーバ経営を導入したのは2010年のこと。きっかけは、前会長の塚本哲夫氏が、稲盛氏の経営塾「盛和塾」の神戸校の創設メンバーに入っていたことだった。塚本氏は稲盛氏の言葉を間近で聞き、その価値観と経営手法に深く共感したという。
「営業以外の部門の社員も、お金の使い方や生産性向上、経費の有効活用といった意識を持つようになりました。自部門だけでなく、会社全体の経営を意識できる人が増えたと感じています」
アメーバ経営導入後の効果を、六甲バターのマーケティング本部長・黒田浄治さんはこう語る。
この仕組みにより、社員全員が事業状況や数値を共有。各部署で採算を意識しつつ、とことんおいしさを追求できる土台が整ったのだ。
ただし、アメーバ経営には1つデメリットもある。部門間での売り買いが発生することから、「自部門だけが儲かったらいい」という発想も生まれやすいのだ。
消費者起点の経営哲学
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