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「配属ガチャ」に対応!新卒採用はここまで来た Z世代に多いタイプは「やりたいこと至上主義」

東洋経済オンライン / 2024年10月26日 8時0分

キリンホールディングスで行われた内定式。同期の関係性を深めるワークや、入社を決めた原点を見つめるワークが行われた。全員が会社のTシャツ姿だ(写真:キリンHD)

10月初旬、多くの企業で内定式が行われた。日本経済団体連合会(経団連)が中心となって定めた「採用選考に関する企業の倫理憲章」にのっとれば、正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降となる。就職活動で内々定を得ていた学生は、この日を経て晴れて「内定者」となる。

【図で見る】Z世代とゆとり世代が就職先に求めるものは、ここまで変わった

リクルートの就職みらい研究所の「就職プロセス調査」によると、2025年卒の大学生の就職内定率は10月1日時点で95.9%。現行の就活スケジュール(大学3年生の3月採用広報開始、4年生の6月に採用選考開始)となった2017年卒以降で、過去最高値となった。

企業の採用意欲の高さから、2025年卒の就職活動は学生優位な「売り手市場」の状況が続いており、平均内定取得企業数(2.52社)、内定辞退率(66.2%)も例年と比べて高めの水準となっている。

10年間で指向が変わった

にもかかわらず、今年は4月に新卒入社した社員が短期で離職したケースを報じるニュースが目立った。突然辞める若手社員はなぜ多発しているのか。

背景には、若者の指向の変化がある。現在の大学生やここ数年で入社した若手社員の多くは、1990年代半ばから2010年代序盤生まれの「Z世代」だ。この1つ上の世代が1987年から1995年生まれの「ゆとり世代」。前者に当たる「2024年に新卒入社した世代(2001年前後生まれ)」と、後者に当たる「2015年に新卒入社した世代(1992年前後生まれ)」の価値観を比較したのが、下表の調査だ。

表では「所属する組織に何を求めるか」「組織の何を重視するか」という指向性を表す、8つの項目を分析している。Z世代は「制度待遇」「施設環境」が目立って高くなっており、「会社基盤」を選ぶ率も高くなっている。「納得感のある評価・待遇が得られ、仕事がしやすいホワイトな環境と安定性のある仕事がしたい」ことが読み取れる。

調査を実施したリンクアンドモチベーションに所属し、『Z世代の社員マネジメント』を著した小栗隆志フェローは「ブラック企業という言葉が流行した時期に多感な10代を過ごした結果も大きいが、キャリア投資に対する回収意識の期間が短くなっていることも大きいと思う。目の前の仕事に対して即時報酬を求めている傾向がありそうだ」と分析する。

約10年間で生まれた差異については、「ゆとり教育以降の『自分のやりたいことをやることが正解』という考え方の中で育ったこともあり、自分のやりたいこと至上主義になっていると思われる。スキルが育まれることによって得られる関係性や見える世界の変化があることを、まだ経験的に理解できていないのだろう」(小栗フェロー)。

「配属ガチャ」には何年がまんできるか

「やりたいこと至上主義」の傾向は、配属先の希望にも表れている。リクルートの就職みらい研究所の調査によると、「最初の配属先が希望と異なる場合、希望の仕事に就くまで転職せずに働き続けられる期間」という質問に対し、5年以内と回答した学生の合計が約5割に達した。

学生の指向の変化を受けて、採用企業もミスマッチを防ぐためのさまざまな取り組みを行っている。

飲料大手のキリンホールディングス(HD)は、2024年卒の新卒採用からコース別採用を拡充した。2023年卒では技術系コース(生産・技術開発コース・エンジニアリングコース・研究コース)、事務営業系コース、デジタルICT戦略コースという区分だったが、2024年卒では技術系、事務営業系のコースをより細分化した。

事務営業系であれば、営業、SCM(需給・物流)、経理、法務、人事から選択できる。2025年卒からは事務営業系にマーケティングコースが追加となる。

キリンHDの担当者は「『自身がどんな業務に就いて、どんな成長ができるのか』を重要視する就活生が増え、入社後にどんな部署に配属をされるのかに対しての不安感が強い。SNSの発達により、そうした不安・不満を共有しやすい環境もある。キリンとしても、グローバルでの競争が激しくなる中で、より専門的なスキルを身に付けた人材が必要と考えた」と背景を説明する。

経理など、直近は新入社員を受け入れていなかった部署もあったが、新たに新入社員の研修制度を構築するなど社内での変化も生まれつつあるという。

コース・職種別採用を始める企業は増加傾向にあり、牛丼チェーン「すき家」などを運営するゼンショーホールディングスも2025年春入社の新卒社員からコース別採用を導入する。

伊藤忠は間口を広げる

社員との接点を増やすことで、会社に対する理解やエンゲージメントを深める取り組みも進んでいる。

総合商社の伊藤忠商事は、従来実施をしていた1on1(オンライン)の社員訪問に加えて、1onNのグループ社員訪問(社員1名対学生複数名のオンライン座談会)を実施。結果として、これまで機会を提供しきれなかった学生を受け入れることが可能になり、2025年卒は前年比で約1.5倍の学生との社員訪問、またはグループ社員訪問が実現した。

2023年10月から新たに取り組んだ1onNにおいては、学生から「1対1の社員訪問をしたことがない学生でもハードルが低く参加しやすかった」という前向きな声が多数あったという。

メガバンクの三菱UFJ銀行では、数年前から「メンター制度」を取り入れている。インターンシップに参加した就活生などに、選考を伴走する相談員として3年目の若手行員がつく制度だ。

メンターを務める行員は1年間限定で人事部の採用事務局所属となり、1人あたり数十人~100人程度の学生の相談に乗る。志望動機のブラッシュアップや選考面接のフィードバックなどのサポートが受けられる。

三菱UFJ銀行人事部採用・キャリアグループの船本浩一次長は「最終的には『(行員と接してみて)人で決めました』という声もあり、学生の評判はいい。今の学生は『三菱UFJで何が学べるんだっけ』という観点でわれわれを見ており、必ずしも1社にとどまることを所与としていない」と語る。

大企業が採用のミスマッチに配慮する動きが広がる一方、就活生と企業のマッチングを高めるユニークな民間サービスも登場している。「令和の就活」は、まさに様変わりしている。(後編に続く)

常盤 有未:東洋経済 記者

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