「東大を出れば安泰」ではない時代に必要な教育 子どもの思考力を深めるため家庭でできること
東洋経済オンライン / 2024年10月27日 11時0分
「お友だちの悪口は絶対だめって言われているけど、どういったら悪口なのかな?」
「悪口やニックネームを禁止して、みんなが言いたいことが言えなくなるのって、どう思う?」
つまり、子どもの思考力を鍛えたければ、親も世間一般で言われている「常識」や風潮、一面的な考えから脱け出して、物事を深く考えさせる必要があるということです。
「学ぶことの本質」を見失わない
また、知識というものは常に更新され続けるものであり、大学で学んだことが10年後や20年後にも通用すると思うのは間違いです。
たとえば、医師の世界で言えば、現在の医師の多くは医学部で習った「血圧が高ければ、下げなければいけない」「コレステロールが高いと危険」といった知識を疑わず、患者さんに対してもそのための薬を出し続けています。
しかし、最近の研究論文を読むとコレステロールが高めの人の方が生存率は高いことが示されるなど、新たな知見が次々と出てきています。
また、日本では急性心筋梗塞で亡くなる人の数は欧米に比べて少なく、その12倍の人ががんで亡くなっています。そして、コレステロール値の高い人の方ががんになりにくいこともわかっています。
ですから、何が何でもコレステロールを下げた方がいいとは言えず、患者さん1人ひとりの症状を見て臨機応変に対応する必要があるのです。
学ぶことの本質は、常に新しい情報を収集して学び続けること、さらにその情報や知識に基づいて、自分の考えや行動を適応させる柔軟性を持つことです。知識や情報は時代とともに変化していきますが、こうしたことができる人は、その変化に応じて自分自身も成長し続けることができるはずです。
新しいことを学んで柔軟に考える力があれば、1つの方法がうまくいかなかった時にも他にいい方法がないかと考えることができます。
本来、受験勉強というのは、そういった力を伸ばすためのものです。
社会に出た後も自分の思っていた通りにうまくいかないことがあった時にはその方法に固執するのではなく、他の方法でゴールにたどり着くためにはどうすればいいかを考える能力を常に養っておく必要があります。
そうした力を持っている人の方が、仕事ができるのは当然のことですが、精神科医として言わせていただくと、その方が将来的にうつ病になりにくいとも言えます。
「これでなければいけない」と一つの方法にこだわって先に進めない人よりも、「これ以外にもいろいろな道がある」と柔軟に考えられる人の方が精神的な落ち込みが少なく、うつ病になりにくいのです。
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