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「セクシー田中さん」の問題で我々が学んだ事とは 不幸な事件がもう2度と繰り返されないために

東洋経済オンライン / 2024年10月28日 16時0分

一方、TV局など映像に携わる側は、原作漫画を映像化してより良くしたいと思う反面、その際に、映像化に合わせた改変も必要という考え方もあるようです。

作品は漫画家にとって血肉を分けた存在

最初から原作の改変内容にしっかりした合意ができていたり、映像制作陣と漫画家・出版社側でリスペクトを持ち合って、あとはよろしくというかたちで制作できれば良いとは思います。

ただ、特にTV局のドラマ制作現場などは、予算が削減され、納期が厳しく、なかなかそう思う通りにもいかないという事情があったようです。

こうした不幸な事件は、もう2度と繰り返されないようにとも思います。

事件の調査も出版社側テレビ局側でおこなわれましたし、いろいろと改善がなされていきはするのでしょう。

ただ、この事件からの学びとして、これからこうした作品作りの世界に携わる方は、漫画家にとっての作品が、血を分けたわが子のようなものであることを肝に命じることは、大前提であると身につけていただきたいです。それを原作者の同意なく変更することは言語道断ですし、そもそも著作者人格権で守られているものです。

「IPビジネス」と一言でいうと、ビジネスということで、その巨大な展開などに目がいきがちですが、その大元たる作品は、作り手である漫画家の血肉を分けた存在です。

その子を預かり、世に広めたり、新たな価値を育んだりする際には、そうした目線、リスペクトや愛情、そして事前の合意を持つことが本当に大切です。

よく、こうした仕事に入ったばかりの人は「そうはいっても、たかがマンガ」という姿勢を仕事にだしてしまいがちです。また、原作に対しての愛のないプロデュースや展開は、ファンをも同時に裏切ることが数多くあります。

これは、いずれにせよ悪い結果にしかつながりませんし、そうした考え方を理解できない人は、こうした仕事に携わることが向いてないともいえると思います。

作品と作家をともにリスペクトし、その世界観やキャラクターに愛を持って接することが、結局最後はビジネスの成功にもつながります。ここは、他の業界から来た人や、実務経験のない人には本当にわかりにくいところですので、IPビジネスに関わる人は肝に銘じるべきでしょう。

よくわからない作品にも愛情に同調する

それでも、自分では作品のことがよくわからなかったり、見たり読んだりしてもなかなか入り込めない作品を、行きがかり上扱うことはこの業界にいるときは多々あります(最低限、作品に触れないというのは論外です。そこはちゃんと見ましょう)。

そうした際は、できる限りファンや、一緒に携わっている作品愛のある人によく話を聞き、愛情に同調することに努めることが、結局仕事をスムーズに進めること、結果を出すことに繋がります。最低限の抑えどころです。

ちなみに、こうした業界のベテランのなかには、まったく作品のことがわからなくても、しっかりと作り手さんやファンが満足するクリエイティブをつくる人もいたりはします。

これはまた、長い研鑽のうえで達する境地の様なものがありますが、感覚知も多いため、そうした方にはよくお話を聞いてみましょう。その考え方や基本的な振るまい方は、プロとして仕事をしていくうえで、貴重な力になると思います。

菊池 健:一般社団法人MANGA総合研究所所長/マスケット合同会社代表

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