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欧州系航空会社で「中国路線」縮小が相次ぐ事情 ロシア迂回でコスト高、中国勢と競争にならず

東洋経済オンライン / 2024年10月28日 19時0分

LOTポーランド航空はワルシャワ−北京線の運行休止に追い込まれた(写真は同社ウェブサイトより)

ヨーロッパ系の航空会社が、本拠地と中国を結ぶ航空路線を相次いで縮小している。10月に入り、LOTポーランド航空と北欧のスカンジナビア航空がその列に加わった。

【写真】中国国際航空に納入された30機目のエアバスA350型機

LOTポーランド航空は10月下旬から2025年3月までの冬ダイヤの期間、ワルシャワと北京を結ぶ直行便の運航を休止する。ポーランドの現地メディアの報道によれば、その要因は航空券の販売不振だ。競合する中国系航空会社のほうが所要時間が短く、運航コストも低いため太刀打ちできないと判断した。

スカンジナビア航空も同様の理由で、コペンハーゲン-上海間の直行便の運航休止に踏み切った。両社の決断により、中国路線を縮小したヨーロッパ系航空会社は合計5社となった。

飛行距離が大幅に長く

こうした動きの先駆けになったのは、イギリスのヴァージン・アトランティック航空だ。同社は7月、1999年から25年間存続してきたロンドン-上海線の運航を休止すると発表した。これは同社が運航する唯一の直行便であり、中国路線から事実上撤退した格好だ。

翌8月には、同じくイギリスのブリティッシュ・エアウェイズがロンドン-北京線の運航休止を決定。さらに10月8日には、ルフトハンザドイツ航空がフランクフルトと北京を結ぶ直行便の運航を休止すると発表した。

ヨーロッパ系航空会社を中国路線の縮小に追い込んだ原因は、(2022年2月に始まった)ロシアのウクライナ侵攻にある。西側諸国とロシアの制裁の応酬により、ヨーロッパ系航空会社はロシア領空を避けて迂回しなければならなくなった。そのため中国路線の飛行距離が長くなり、所要時間と運航コストが大きく増加したのだ。

さらに、中国系航空会社との競争激化が追い打ちをかけた。中国系航空会社はロシアの制裁対象ではないため、中国とヨーロッパを最短距離で結ぶことができる。ヨーロッパ系航空会社は、所要時間と運航コストの両面で勝負にならないのが実情だ。

それだけではない。中国発着の国際線の旅客数は、現状ではまだコロナ前の水準まで回復していない。そのため、「中国系航空会社は保有する大型旅客機を持て余している」と、ある業界関係者は指摘する。

航空会社にとっては、あえて運賃を下げてでも旅客機の稼働率と搭乗率を上げたほうが、余剰機材を遊ばせておくよりも損失が小さい。中国系航空会社がヨーロッパ路線の増便と価格競争に走ったのは、その意味では当然の経営判断だった。

欧州系のロビー活動に懸念

だが、中国の航空業界内にはここにきて新たな不安が芽生えている。中国路線の縮小に追い込まれたヨーロッパ系航空会社が増えるとともに、中国系航空会社への風当たりがヨーロッパで強まりかねないことだ。

「ヨーロッパの航空会社はロシア領空から締め出されているのに、中国の航空会社はそうではない。これは不公平な競争だ」。KLMオランダ航空のマルヤン・リンテルCEO(最高経営責任者)は10月初旬、現地メディアの取材に対してそう不満を漏らした。

こうした状況について、ある中国の業界関係者は次のように懸念を示した。

「ヨーロッパ系航空会社がEU(欧州連合)に対するロビー活動を強めれば、EU各国(の航空当局)が発着枠の制限などさまざまな手段を通じて、中国系航空会社に圧力をかける可能性が否定できない」

(財新記者:鄒曉桐)
※原文の配信は10月12日

財新 Biz&Tech

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