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暴力・歴史・苦痛をひもとくノーベル賞作家の視点 ハン・ガン、個人の記憶・苦痛を探究し文壇揺るがす

東洋経済オンライン / 2024年10月28日 9時0分

「あなたが死んだ後、葬式ができず、/あなたを見た私の目が私怨になりました。/あなたの声を聞いた私の耳が私怨になりました。/あなたの息を吸い込んだ肺が私怨になりました」

暴力の中での果てしない愛を描く

今回、スウェーデン・アカデミーの審査評でも重要な要素として言及された作品『少年が来る』(2014年)の一場面だ。

1980年の光州民主化運動(光州事件)の問題を正面から扱ったこの小説は、『菜食主義者』とともにハン・ガンを代表する作品でもある。

イタリアの権威ある文学賞「マラパルテ賞」、スペインのサンクレメンテ文学賞を受賞し、アイルランドのダブリン文学賞、ドイツのリベラトゥール賞の候補に上がるなど、ハン・ガンの小説の中で国際的に最もよく知られた作品でもある。一部ではハン・ガンの「真の代表作」とも評価される小説だ。

「凝り固まった愛が皮膚を焼いて染み込んだのを覚えている。骨髄に刺さって心臓が縮むような……。その時わかった。愛がどれほど恐ろしい苦痛なのか」

『別れを告げない』(2021年)の一説である。もう一つの韓国現代史の悲劇である1948年の済州島4・3事件で再び歴史問題を喚起したハン・ガンは、おぞましい暴力の中でも果てしない愛の物語を描き出した。

英語圏で絶賛された『菜食主義者』以降、『少年が来る』や『別れを告げない』などの作品がフランス、イタリアなどで高評価を受け、ノーベル文学賞へと導く決定的な役割を果たしたというのが、出版界関係者たちの説明だ。

ハン・ガンは、ノーベル文学賞受賞直後に記者会見を拒否した。一方で、2023年にはこの作品でフランスのメディチ賞を受けた際の記者懇談会では、ハン・ガンは「作品を書きながらとても寒かった。これからは冬から春へと向かいたい」という冗談を言う一幕もあった。

「これからは生命について書く」

ハン・ガンは「これからは生命についての話を書いてみようと思う」とも発言し、「もちろん書けるように書くが」とのヒントを残した。個人の苦痛における生命と治癒の物語。50代半ばならば、まだ作家としては全盛期でもある。ノーベル文学賞はハン・ガンの描き出す文学世界の「完成」ではなく「過程」のうちの1つだ。

文学評論家であり、韓国・西江大学国語国文学科のウ・チャンジェ教授は「ハン・ガンは霊媒として、生きている者と死んだ者、人間と動物、人間と植物の間で、途絶えてしまった魂の道を繋ぐ感受性を見せてくれる作家だ」と評価する。

そして「韓国の現代史を力強い視点で眺望した先輩作家たちの作品を土台に、ハン・ガンは同じ歴史を扱いながらも人間の内面の苦痛とトラウマをさらに深く紐解き、それを神話的な想像力で再現した独特な美学で繰り広げることができたようだ」と述べた。

ソウル新聞

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