1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

使い勝手悪い?激変した「青春18きっぷ」の問題点 自動改札を通れるという改善点もあるが…・

東洋経済オンライン / 2024年10月28日 6時30分

これらのことは、JR各社も熟慮の決定であろうから、18きっぷの売り上げが減るのは覚悟しているに違いない。

むしろ、今回のルール改定の最大の問題点は、ネーミングが変わっていない点ではないか。これほどに利用方法が変わったにもかかわらず、相変わらず「青春18きっぷ」を名乗っているが、筆者は新しい18きっぷはもはや「青春18きっぷ」ではないと感じる。先日まで発売されていた「秋の乗り放題パス」と内容が似ているので、「冬の乗り放題きっぷ」「春の乗り放題きっぷ」などとしたほうが、よほどすっきりする。

多くの利用者の間では、18きっぷは期間内に任意の5日間、複数人数でも可能ということが浸透しているので、同じネーミングでまったくルールの異なる切符を発売することで混乱を招くのではないか。知名度のある商品だっただけに新しいルールが浸透するのに時間を要すると感じる。

ちなみに券売機で購入する場合、従来でも利用開始日を押す必要があった(押してもその日に利用するという意味ではなかった)。ところが次回からは利用日を決めてからしか購入できなくなったので、「とりあえず買っておく」ということもできなくなった。

筆者はかつて旅行会社で海外格安航空券や海外の宿泊を手配していた経験があり、ヨーロッパ旅行では「ユーレイルパス」(各国別のもの含めて)も扱っていた。当初「ユーレイルパス」は連続する15日間、21日間有効などであったが、移動日と観光の日のメリハリが付けにくいことから、「1カ月の間の任意の5日間」などという「ユーレイルフレキシーパス」というタイプが主流となった。これは世界の多くの地域での流れである。

それを踏まえると、今回の18きっぷのルール改定は、時代の流れに逆行している。日本各地の観光振興にプラスになるとは思えないし、観光業関連の人たちにも歓迎されないであろう。

では、ヨーロッパではこの「任意の5日間」といったルールの切符をどうやってうまく機能させているのだろう。かつては紙の切符を駅員や車掌が目視して確認していたが、現在はスマートホン上のアプリに表示されるQRコードを自動改札機や車掌が携帯するスマートホンで読み込んで、有効な切符かどうかをチェックしている。

モバイル版で従来の18きっぷを復活させてはどうか

筆者は、海外の鉄道を紹介するたびに、日本のIT化の遅れを指摘しているが、今回のルール改定にあたって海外の事例を参考にすることなどは行ったのだろうか。日本の鉄道は安全性、時間に正確な運行、利用者のマナーのよさなどから、世界一の自負があるのであろうが、旅客サービス面では世界に後れを取ってしまった。

いずれ日本でも、長距離切符はアプリからの購入が主流になるであろう。海外に負けないためにも「青春18きっぷモバイル版」などとして、任意の5日間で利用できる切符の復活を期待したいし、そのほうが日本全体の観光振興にも役立つはずである。物価高や円安などから海外旅行が低迷している時期に、国内旅行にまでマイナスのニュースで途方に暮れる人が続出しないことを願うばかりである。

谷川 一巳:交通ライター

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください